事例

FileMaker導入で医療福祉教育を革新:川崎医療福祉大学の新たな一歩

川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部 医療福祉経営学科では、Claris International Inc. (以下 Claris)が提供する「FileMaker キャンパスプログラム」を採用し、これまで紙と表計算ソフト等を使用していた「病院情報システム演習」において、Claris FileMaker プラットフォームをベースにした電子カルテ・オーダリングシステム「ANNYYS_EVE」と医事会計システム「WebORCA」を導入した。これにより、電子カルテからオーダリング、レセプト(診療報酬明細書)までのデータの流れを一貫して理解し、糖尿病、循環器、消化器などの代表的な症例データや、診療報酬に関して体系的に学ぶことができるようになった。

未来を切り開く力を身につける川崎医療福祉大学の魅力

川崎医療福祉大学は、岡山県倉敷市にある医療と福祉に特化した学びの場で、保健看護学、医療福祉学、リハビリテーション学など多彩な学部・学科を設置している。現場で即戦力となるスキルを身につけることを目的とした実践的なカリキュラムを展開し、隣接する川崎医科大学附属病院をはじめとした実際の現場での経験を積めるなど、地域医療や福祉との強い連携を生かした学外での実習も充実している。

医療福祉マネジメント学部は、「医療福祉分野のマネジメントに関する専門的知識・技術の融合を理解したうえで、医療福祉サービス及び関連分野で運営・管理が的確に実践できる専門家を養成する」ことを教育理念としている。2024 年現在、同学部には「医療福祉経営」「医療情報」「医療秘書」「医療福祉デザイン」の 4 学科があり、300 余名の学生が学んでいる。

医療福祉マネジメント学部 医療福祉経営学科の就職率は 100% で、卒業生は、医療機関・福祉施設・医療系などのさまざまな企業へ就業している。医療機関の事務職として働いている卒業生は、医師・看護師などのメディカルスタッフが良質な医療サービスを提供し続けるためのマネジメントスタッフとして、医事会計、医療システム、データマネジメントなどの専門知識を生かして活躍している。

学習環境の改善のため、授業の改革に着手

近年、医療機関では急速に IT 化が進み、電子カルテやレセプト(診療報酬明細書)データの分析は病院経営を分析する上で重要な役割を担っている。ただ、教育機関では病院で利用する高額な IT システムを学生がそのまま利用することは難しく、医療福祉マネジメント学部の一部の授業では紙をベースとした旧来の学びの手法が残っていた。

医療福祉経営学科では、医療機関がデジタル化へシフトしている近年の潮流に乗り、紙や表計算ソフトをベースとしたレセプトデータ処理という従来の授業内容から脱却することに取り組んでいる。その一環として、Claris が教育機関向けにライセンスを無償提供する「FileMaker キャンパスプログラム」を申請。そして採択されると同時に Claris 認定パートナーである株式会社エムシス(東京)が提供する病院向け電子カルテ・オーダリングシステム「ANNYYS_EVE」を採用した。併せて、「ANNYYS_EVE」とデータ連携可能な医事会計システム「WebORCA」も導入した。IT システムによる学習環境の改革である。

医療福祉マネジメント学部 医療福祉経営学科 学科長 の 櫃石 秀信 准教授は、従来の表計算ソフトと紙を使った授業形式から新たに FileMaker プラットフォームを使って医事会計システムを学ぶという演習に移行したことについて 「これまで医事会計システムの演習ができていなかったため、IT 化された医療機関に就職して当惑する学生が多かったと思われます。電子カルテと連動し医事会計にデータが流れてくる仕組みに大学で触れ、学ぶことで、より学習意欲を高めることができます。表計算ではなく、データベースの概念を学生のうちから習得することは社会に出たときに大変役に立つと思います」と語る。

医療福祉マネジメント学部 医療福祉経営学科 学科長 櫃石 秀信 准教授

学生にアプリ開発を体験させる狙いとは?

カリキュラムに iPad アプリの作成演習を 2 コマ入れた狙いについて、櫃石准教授は次のように説明する。

「本学で教える前に私自身 2003 年から 18 年間、3 つの病院で勤務しましたが、その全ての病院で FileMakerが使われていました。システムベンダーではなく、病院スタッフや医師が作った FileMaker アプリが病院経営と臨床データの研究にとても良い効果を生み出していました。システムは使うだけでなく、作ることもできるという概念を理解してもらうことは大切です。情報システムなどの専門分野でない学生にアプリ開発させることはハードルが高いと思っていましたが、実際には学生の反応は予想以上に良く、次年度に向けて学生の成功体験を増やすことを重視していく予定です」

医療福祉経営学科 2 年次対象の「病院情報システム演習」に参加し、実際に FileMaker に触れた学生の西村さんは、「アプリを作るというのは自分にとって未知の世界だったので、授業は楽しかったです。また、想像していたより簡単に行うことができ、正直驚きました」と話す。

同じく達見さんは、「アプリ開発は未知の領域で、正直、懐疑的な気持ちもありました。でも、すごく簡単にアプリ作成やプログラミングができ、クオリティーの高いものが完成しました。FileMaker はすごいと思いました。将来 FileMaker をさまざまなところで使う場面も増えると思うので、さらに学びたいと思いました」と学習への意欲を高めた。

中村さんは、「データを絞り込んだり、検索するのが簡単でした。さらに自分のアプリから iPad カメラを起動させて写真を取り込むというスクリプトも日本語で書けるなど、FileMaker でプログラミングの世界観が変わりました。今後、復習をしながら将来の仕事に使っていけたらなと思います」と笑顔で抱負を語ってくれた。

実際に自分の作成したアプリを iPad 上で実行する 中村さん

学生への期待と教育効果

「学生には、FileMaker を通じてデータベースの基礎や実際のビジネスアプリケーションの構築方法を学んでほしいと考えています。医療福祉経営学科の学生にとって、システムエンジニアやプログラマーになることが目標ではありません。病院や企業でのマネジメントスタッフとしての役割を理解し、データベースの活用方法を知っておくことが重要なのです。特に FileMaker を使ったアプリ開発を通じて、自分でシステムを作り上げる達成感を味わってもらいたいです」と櫃石准教授。またカリキュラムに GIS や Tableau を活用した学びも盛り込んでいる。医療データを外部データとどのように組み合せるかを考える授業についても、過去に櫃石准教授が病院の事務長していた時にデータを活用して病院経営分析に携わった経験を反映させているという。

以下が当演習のシラバスである。

<2024年 医療福祉マネジメント学部 医療福祉経営学科 専門必須科目「病院情報システム演習」シラバス

授業内容と具体的な学習項目:急性期病院等で実際に活用されている情報システムや公開データを用いた分析について、実践的な手法を身に付けることを目的とする。また、病院現場の医療情報システムを実践的に理解するための教材として、患者の診療そのもののシナリオを作成し、電子カルテの実機(教育環境)を用いて演習を行う。

医療福祉経営の基本的な能力の一つとして、病院情報システム、経営情報システムを理解し操作するために、実際の病院情報システム(医事会計システムおよび電子カルテシステム)の操作演習を行う。

病院情報システムに用いられるデータベース(FileMaker Pro)応用操作 - iPad アプリ作成 授業

医療福祉マネジメント学部 医療秘書学科への横展開

FileMaker キャンパスプログラム導入校はその後、簡単な申請手続きで他の学科やシラバスへの横展開が可能になる。今回の医療福祉経営学科「病院情報システム演習」での導入を受け、医療秘書学科でも FileMaker とANNYYS_EVE を使った演習が開始される。医療秘書学科では、医師の診療・研究・教育・経営活動などの業務の段取りマネジメントする専門知識・技能で支え、医療チームの一員として活躍する人材を育成している。今回導入した オーダリングシステム、電子カルテシステムの学びにより、学生が体系的に医療情報システムを理解でき、より学習効果が向上することが期待されている。

Windows, Mac, iPad, iPhone などマルチデバイスに対応する ANNYYS_EVE

FileMaker キャンパスプログラムの導入メリット

FileMaker キャンパスプログラムは、教育機関向けに FileMaker ライセンスが無償で提供される。このプログラムは、FileMaker というソフトウェアの使い方を覚えることが目的ではなく、学生がデータベースの概念を学び、さらには実際にローコードで開発しアプリケーションとして動作するまでを短時間で体験することを通して、IT による課題解決の可能性や気付きを与えることに主眼を置いている。

キャンパスプログラム導入校の事例としては、以下のものがある。

【編集後記】

FileMaker キャンパスプログラムの学びを通して、学生は「システムは使うだけのものではなく、自分たちで作ることができるもの」という概念をもつことができる。DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性が叫ばれる現代において、FileMaker キャンパスプログラムは、学生が実践的な IT スキルを身につけるための絶好の機会だ。将来、社会で必要とされるデータベースの概念を理解しながらデジタルスキルを習得し、病院や企業でのマネジメントに役立てることもできる。今回の 櫃石准教授が取り組んだ改革で FileMaker を採択したのも、自身が 18 年間 3 つの医療機関で勤務した際 FileMaker が 病院経営において高いROI(投資利益率) と DX 実現効果を示したことから、医療福祉経営学科の学生が学ぶにふさわしいと判断されたからだ。(ローコード開発でDX加速 : 松波総合病院の事例) 近い将来、川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部から多くの医療 DX 人材が輩出されることに期待したい。

FileMaker キャンパスプログラムについて

https://content.claris.com/ja_campus-program