ローコード

いまさら聞けない、ノーコード・ローコードが注目されるワケ

今求められる「ノーコード・ローコード」開発

ノーコード、ローコードとは、プログラム開発言語を使ったコーディングを全く、あるいはほとんどすること無くアプリケーションの開発を行うことを指します。特にここ 1 年でこのノーコード・ローコードというキーワードが国内でもよく聞かれるようになりました。ミック経済研究所による市場調査レポート*では、ローコード開発市場全体では 2023 年度に 4,560 億円、CAGR(年平均成長率)16.3% という予測がされており、大きな伸びが見込まれています。なぜ今、ノーコード・ローコードが注目を浴びているのでしょうか?そこには、日本の企業や IT 業界が直面している課題と、ノーコード・ローコードが 持つ DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させるための大きな可能性に理由があります。

(*)デロイト トーマツ ミック経済研究所『DX実現に向けたローコードプラットフォームソリューション市場の現状と展望 2020年度版』(https://mic-r.co.jp/mr/01830/)より

迫りくる“2025 年の崖”

現在、日本の企業が大きな IT の課題に直面しています。経済産業省によるレポートでは、現在多くの企業が DX の推進を阻む課題を抱えており、それを放置すれば 2025 年以降、最大 12 兆円/年(現在の約 3 倍)の経済損失が生じる可能性があると指摘しています。これがいわゆる 2025 年の崖と言われるものです。

その課題は大まかに以下の通り:

  • レガシーシステムの問題:既存のレガシーシステムのブラックボックス化により、データ活用し切れないだけでなくシステムの改修が困難でその保守にも多額の費用がかかり新しいシステムに投資することも難しい。
  • IT人材不足の問題:2015 年ではおよそ 17 万人だった IT 人材不足が、2025 年には 43 万人まで拡大する見込み。
  • ユーザとベンダーの関係性の問題:ベンダー企業への丸投げがシステムのブラックボックス化や保守費用の増大につながるほか、ベンダ企業も既存システムの保守に追われ最先端の技術ノウハウが蓄積されない。

もちろん、ローコード開発ツールにより 2025 年の崖問題を完全に解決できるものではありませんが、企業がデジタルシフトを進める上でローコード開発プラットフォームは強力な推進剤となり、問題解決への大きな手助けになると言われています。

"誰でも開発者" の時代へ

ノーコード・ローコードの技術を用いて業務アプリケーションを開発するメリットとして挙げられるのが、専門的な開発知識を持っていない非エンジニアでもアプリケーションの開発が可能、という点です。もちろんいくらノーコードだ、ローコードだとはいえ、アプリケーション開発を行う上では開発ツールの利用方法や、ビジネスロジックの考え方など、持っておくべき知識というものはあります。

しかし、コーディングでの開発と比べるとノーコード・ローコードの方が圧倒的にアプリケーション開発のハードルは低いと言えます。業務フローを熟知し、解決すべき課題を理解している業務経験者がアプリケーションを開発できれば、より現場のニーズにマッチしたアプリケーションとなり、効果を発揮しやすくなります。

さらには、ローコード開発プラットフォームの多くはコンパイル (人間が分かる言葉で書いたプログラムコードをコンピュータが分かる言葉に翻訳すること) が必要ないため、現場からのフィードバックを即時修正して本番に反映することが可能です。

従来の開発体制の場合、情報システム部門(IS) の担当者が要件定義の過程でユーザの要望を伝え、委託先の開発会社に所属するシステムエンジニア(SE) と密にコミュニケーションを取り仕様を確認し、SE は仕様に沿ってプログラマー(PG) にコーディングを依頼していました。それでもなお、出来上がったアプリケーションがエンドユーザの期待したものと異なっている、想定していた画面と異なり使いづらいシステムをユーザに忍耐強く使ってもらっているなどの問題が発生していました。

エンドユーザ自身が開発を行うという意味では、乱暴な言い方をすれば、IS・SE・PG が不要になりコストと時間を削減できることになります。代わりに、ユーザ自身がシステム責任を負うことになります。欧米の企業では社内に開発人員を育て、他社との競争力を柔軟な IT システムで実現しています。

この特性は同時に IT 人材の問題を解決し得るものになると考えられます。人材不足がゆえに社内のシステム開発、改修のプロジェクトがなかなか進まず、かといって人材の確保が難しく育成にも時間がかかる従来の IT と比べて、誰でも開発者となり得るノーコード・ローコード開発では、限られたエンジニアリソースに依存すること無く現場主体で様々なアプリケーションを開発し、展開、運用することが可能となります。

企業競争力を高めるためのスピード

また、別のメリットとしてアプリケーション開発および展開のスピードがあります。ノーコード・ローコード開発ではドラッグ & ドロップでの直感的な画面作成や、あらかじめ用意された機能を組み合わせるだけのビジネスロジック作成、そして開発したアプリケーションを展開し運用するための環境も用意されている事が多いため、作ってから使うまでを場合によっては数日~数週間という短期間で行うことが可能です。

従来の主流であるウォータフォール型のシステム開発では要件定義や設計、実装、テストなどすべての工程を進めるために多くの時間が必要であることや、システムに対する細かなカスタマイズであっても時間をかけて計画、テストを行う必要があります。

その他、開発が外部への委託であった場合、カスタマイズの都度見積りを取る必要があるなど、「変えたくても変えられない」状況が現場には多くありました。さらに、冒頭で述べた通り現在の日本ではレガシーなシステムがまだまだ数多く存在し、その保守に IT 予算の大半が消費されており、新しいシステムの導入がなかなか進まない、という問題も多くの企業が抱えています。

特に昨今、あらゆる業種で企業間の競争が激化し、多くの企業でも様々な業務改革を行っていますが、それはつまり、常に様々な変化が生じているということ。IT システムが業務に欠かせない今、システムを柔軟かつスピーディーに変えることができなければ業務改革は成り立ちません。それを可能とするノーコード・ローコード開発は企業の競争力向上にも大変重要な役割を果たすのです。

変化するユーザと IT ベンダの関係

システム開発の手法には、先に述べたウォータフォール型とは異なり、必要な機能から段階的にリリースしてさらに機能の変更や追加を短期のサイクルで回しながらシステムを作り上げる、アジャイル型の開発手法があります。

アジャイル開発は変化に対し迅速かつ柔軟に対応しやすいというメリットがありますが、実はローコード開発はその性質上アジャイルと親和性が高く、組み合わされる事が多いのです。こうした手法では、機能を実装するための技術よりも、業務課題をどのように解決するか、つまり業務プロセスに力点が置かれます。そのためユーザが開発プロジェクトに関与する度合いが従来よりも大きくなり、IT ベンダとユーザとの協働によりシステムを開発することになります。

ローコード開発の技術的なハードルの低さに加え、IT ベンダとの協働はシステムをブラックボックス化させなために大いに有用だと言えます。

同時に、これは IT ベンダーの役割をも変化させるものになり得ます。従来の開発を受託するという役割から、業務プロセスの改善やそのための IT ツールの選定などに関するコンサルティング、もしくはエンドユーザ開発を行うための開発支援といった「ユーザの DX を手助けする」という役割に変わっていくと考えられます。

ローコード開発の場合は機能を実装するための技術よりも、業務課題をどのように解決するか、つまり業務プロセスに力点が置かれます。そのため、ユーザが開発プロジェクトに関与する度合いが従来よりも大きくなるため、IT ベンダとユーザとの協働によりシステムを開発することになります。

カイゼン文化の醸成へ

お客様から色々なお話を聞く中で、ノーコード・ローコードがもたらすのは効率的な IT の導入だけではなく、組織の文化に対する変化があることも見えてきました。だれでも開発者となり得、現場主体の開発、運用は、従来の情報システム部門を中心としたトップダウンではなく、現場主体のボトムアップで作り上げる IT への転換となります。

あるお客様はこのように話されていました。「システムの利用者は、自らが声を上げればそれがシステムに反映されることに気がつき、やがて『どうすればより効率的なシステムになるだろうか』を考えるようになった。つまり、現場の社員の中に自ずとカイゼンの意識が芽生えたんです。」ノーコード・ローコードは単なるアプリケーションの開発手法ではなく、このようなカイゼン文化の醸成にもつながるのです。

Claris FileMaker、実は35年前からノーコード・ローコードでした

さて、ここまでノーコード・ローコードが持つ可能性について述べてきましたが、我らが Claris FileMaker は 1985 年 に最初のバージョンがリリースされた当初からノーコード・ローコード開発ツールでした。

FileMaker の初期バージョン

当時はノーコード・ローコードという言葉はなく、FileMaker も「カード型データベース」という位置づけでした。しかし、データベースソフトウェアとしての役割だけでなく、直感的な画面作成やノンコーディングでのビジネスロジック作成など、まさにノーコード・ローコード開発ツールとしての機能を当時から備えていました。それから 35 年の歴史の中で世界中の様々なユーザの声を聞き、Claris FileMaker は大きく進化し続けてきました。

FileMaker Go (iOS App) による iPhone や iPad との高い親和性や Web ブラウザからアプリケーションへのアクセスを可能とする WebDirect、そしてクラウドベースでサーバ環境を提供する FileMaker Cloud など、単なるアプリケーションを開発ためのツールではなく、それを展開し運用するためのプラットフォームとして進化を遂げてきました。

さらに、最新版のバージョン 19 では JavaScript との統合を可能とする機能により、より高度な機能の実装も可能となっています。非エンジニアのユーザによるノーコード・ローコードな開発から JavaScript を利用したプロコード(コーディングを伴う開発)な開発まで、Claris FileMaker は社内の多様なニーズに対応するためのプラットフォームとして非常にパワフルな機能を備えているんです。

まずはサンプルから

以上、ここまでノーコード・ローコードや Claris FileMaker について長々と書いたものの、、、実際に試してみないことにはその有用性を具体的に理解するのは難しいものです。まずは一度 Claris FileMaker で作成された数々のサンプルアプリをお試しください。

macOS・Window OS であれば Claris FileMaker Pro の無料評価版(45日間利用可能)、iOS であれば App Store より FileMaker Go を無料インストールしていただければすぐにご自身の端末でサンプルをお試しいただけます。また、テンプレートとしてお好みに応じてカスタマイズできるものも多数ございます。


ローコード開発については、電子書籍「ローコード開発入門」でも詳しくご紹介しています。電子書籍の無料ダウンロードはこちら

さあ、皆様のデジタルトランスフォーメーションを Claris FileMaker で加速させましょう!