約 1 年前、Claris は新しく「Claris 技術者試験」を導入しました。この試験は、Claris 製品に関する知識とスキルを評価し、技術者の実力を客観的に証明することを目的としています。
前回のブログ「概要編」では、この「Claris 技術者試験」の概要と、受験に利用できるリソース、合格者特典などについてご紹介しました。
今回はまず、試験配信開始からこれまでの各試験の合格者数や合格率、平均スコアといった統計データから、Claris 技術者のみなさんだけでなく、Claris にとってのこの試験の意味について考えてみます。
そして、既に「Claris FileMaker 技術者試験 2024」の 4 試験に合格されている FileMaker トレーナーの方々からの金言を基に、各試験に向けてどうやって勉強するとよいかを考えていきましょう!
今回の旅路:
- 「Claris FileMaker 技術者試験」の現状
- 各試験の学習方法
- おわりに
1.「Claris FileMaker 技術者試験」の現状
まず、それぞれの試験の受験状況と受験者情報、受験結果などの統計データについて見てみましょう。
なお、最初に公開された「Claris FileMaker 技術者試験 Expert Developer (CFED-3)」の配信開始は 2024 年 9 月、「Claris FileMaker 技術者試験 Basic Developer (CFBD-1)」と「Claris FileMaker 技術者試験 Advanced Developer (CFAD-2)」は 2024 年 12 月、最も遅い「Claris FileMaker 技術者試験 System Admin (CFSA-4)」は 2025 年 2 月といったように、4 つの試験はそれぞれ配信開始日が異なるため、それぞれの統計データを一概に比較することは難しい点についてはあらかじめご了承ください。
合格者状況
まず、次のグラフは、それぞれの試験の配信開始から 2025 年 11 月中旬までの全合格回数(つまり合格者数)と、全不合格回数です。
試験別全合格回数と全不合格回数
このグラフからまずわかるのは、Expert Developer、CFED-3 の合格者数が少ないことですね。合格率は概ね 20% 弱といったところで、やはり、Expert レベルの難度は高いようです。
もう 1 つ注目したいところは、Advanced Developer (CFAD-2) の合格者数が、Basic Developer (CFBD-1) の合格者数の約半分であることです。CFBD-1 の合格者数と CFAD-2 の全受験回数とを比較しても後者の方が少ないようです。これは「CFBD-1 に既に合格しているのに、まだ CFAD-2 を受験していない人が多い」ということでしょうか。もしかして、CFBD-1 に合格した後、一足飛びに Expert Developer (CFED-3) を狙ってらっしゃるのかもしれませんが、一歩一歩着実にステップを重ねることも重要です。これを読みながら思い当たる節がある方は、Basic レベルを制覇した後は、ぜひ Advanced レベルにも挑戦してください。
受験者状況
次の表は、本ブログ執筆時点(2025 年 11 月)の、それぞれの試験の累計合格率、初回受験合格率、および最高点です。「累計合格率」は、受験者ベースの合格率で、全受験者のうち最終的に合格した人の割合を示しています。合格者が合格までに何回受験したかは関係ありません。
この表を見ると、まず「初回受験合格率」列から、CFBD-1 は一発合格される方が多いことがわかります。しかも、「最高点」は「100 点」。CFAD-2 の最高点も「97 点」。上述の難関試験、CFED-3 の最高点も堂々の「84 点」、Claris FileMaker Pro 以外の知識が問われる CFSA-4 も「91 点」と、ハイレベルの技術者の存在が伺えます。さすがは、世界に誇る日本の Claris 技術者!
「累計合格率」の列についてはさまざまな見方があると思いますが、どの試験についても言えることは、初回受験で合格しなくても再チャレンジして合格している人が多くいるということですね。特に、CFED-3 と CFSA-4 は、その難易度の高さにかかわらず、最終的に合格されている人がたくさんいます。
残念ながら不合格になってしまったままの方も、このデータを見て、もう一度、再チャレンジを考えてみませんか?
知識分野別スコア
Claris ではさらに細かく、各知識分野ごとのスコアもモニタしています。次のグラフは、CFBD-1 と CFAD-2 の合格者と不合格者について、知識分野別のスコア平均を比較したものです。
CFBD-1 (左側)の合格者スコア(上)と不合格者スコア(下)を比較してみると、不合格者の方は確かに全体的にスコアは低いのですが、特に知識分野「レイアウトの作成と管理」のスコアが低いようです。この知識分野は、FileMaker のレイアウトを構成するレイアウトパート、ポータルなどのさまざまなレイアウトツール、値一覧、スクリプトトリガなどに関するトピックが含まれている重要な知識分野です。このスコア平均が低いということから、Claris としては、この知識分野に関する学習リソースがわかりにくかったり、まとまっていなかったりするのではないかという反省ができます。
一方、CFAD-2(右側)の上下のグラフを比較すると、知識分野「カスタム App の展開とセキュリティの管理」と「Web 上でのデータベースの公開」の不合格者スコアが少し低いようです。これらはどちらも、カスタム App を複数人で共用する場合に重要になるトピックが含まれているので、Advanced レベルでは是非とも押さえておいていただきたいポイントですね。Claris としても、この辺りの学習リソースをもっと充実させていきたいと思います。
このように Claris 技術者試験は、Claris が提供しているラーニングコンテンツの評価という観点から、Claris 技術者のみなさんだけでなく、Claris にとっても重要なツールとなりつつあります。
2. 各試験の学習方法
それではいよいよ、Claris 技術者試験に向けた効率的な学習方法について探求してみましょう。
まず、Claris の公式サイトの「Claris 技術者試験の概要」の表には、各試験に対する「受験の目安」が明記されています。
各試験の「受験の目安」(「Claris 技術者試験」公式サイト)
例えば、CFBD-1 の目安としては「『Claris FileMaker ガイドブック 基礎編』の学習を終えられた方」と記載されています。つまり、このガイドブックを内容を押さえておくことがこの試験の大前提となりますので、まずはこのガイドブックを中心に学習を進めるとよいでしょう。Claris FileMaker ガイドブックは、Claris のサイトから PDF 版を無料でダウンロードできますし、「本はやっぱり紙派」の方には Claris Store から冊子版を購入することができます。
「Claris FileMaker ガイドブック」ダウンロードページ
これに加えて、公式サイトからダウンロードできる学習ガイドには、「試験の準備」の項目に受験に有用なリソースが列挙されています。CFBD-1 の学習ガイドを例にとると、上記ガイドブックの他、YouTube の Claris 公式チャンネルで視聴できる「動画で学ぶ Claris FileMaker - 基礎編」なども挙げられています。これらのリソースを活用して、各学習目標に沿って勉強を進めていくことが順当な道筋ですね。これは、CFAD-2 についても同様です。
一方で、CFED-3 は各知識分野を横断する総合的な知識とスキルを試されるため、テキストなどの資料やヘルプだけで合格することは困難です。この試験では実践経験に基づく知見が必要なので、日頃から着実にさまざまな技術を積み重ねていくことが重要となります。
また、CFSA-4 では、Claris FileMaker Server や Claris FileMaker Cloud の運用管理経験や、外部認証機関の利用など、多様な環境における知識が問われます。組織のサーバー管理を担当していても、自分が把握している環境以外にも対応できるプロフェッショナルとしての知識が問われることもあります。では、試験に出てくる環境が全部そろえられない場合は(普通、そろえられないですよね)、どのように勉強すればよいのでしょうか?
要チェック!先人の経験から学ぶ
「概要編」でも少しご紹介しましたが、最近開催された Claris Web セミナー (*) では、各試験に関する学習方法についての有益なヒントが数多く提供されました。CFSA-4 についてももちろん言及されています。それによると、YouTube 「FileMaker の自習室」の豊富な動画や、Clarisのサイトに掲載されている過去の Web セミナーの録画を参照することが推奨されています。なるほど、どうしても自分の環境で経験できないところは、先人の知見と経験で勉強させてもらうということですね。
この Web セミナーでは Claris 技術者試験の受験に際しての有用な情報や気づきが得られますので、ライブでご参加いただけなかった方は、ぜひ録画をご視聴ください。
最後に、Web セミナーの中で、パネリストのみなさんが口をそろえて力説されていたことを引用します。
それは、試験対策として最も重要なのは、実際に手を動かし、自分自身で学習・確認すること。
そして、自分の知識を過信せず、不確かな部分は必ずリソースを参照し、正確な知識で補強することです。
これらの実践と、自身の知識を常に客観的に見つめ直す謙虚な姿勢こそが、揺るぎない知識を築き、試験合格への導く土台になるのではないでしょうか。
(*) Claris Web セミナー「挑戦する開発者たち 〜 Claris 技術者試験合格が拓く未来」(2025 年 11 月 19 日開催)
3. おわりに
Claris 技術者試験に向けて学習する時間は、一歩一歩あなたの技術力を高めていく貴重な時間です。合格に向けて学習を重ねることで確実に実力がつき、それがみなさん自身の成長につながります。
技術分野は日進月歩です。最近は AI を中心に特にその進化のスピードが加速しています。このような状況の中では、謙虚に、そして積極的に新しい知識を学び続けることで、プロフェッショナルとしてのスキルを維持し、更なる成長を遂げることが可能となります。そして、このような姿勢を保つことは時代の変化に対応し続けるために不可欠です。
FileMaker ビギナーズ&ジュニアズだけでなく、FileMaker シニアズ&ベテランズ&プロフェッショナルズといったすべての FileMaker 技術者のみなさまが、今後もスキルの維持と新たな能力の獲得に意欲的に取り組んでいただくことを心から願っています。
その過程で、「Claris技術者試験」が一助となれば幸いです。
それでは、一緒に頑張りましょう! ciao!