事例

校務全般のシステムを教員自身がニーズに応じて長年開発、運用

朋優学院高等学校(東京都品川区)では、入学前の学校説明会の予約やウェブ出願から入試の合否に関わる業務、在学中の学籍や成績、卒業後の進路まで、生徒の情報をすべて Claris FileMaker で作成された校務システムで管理している。さらに各種証明書の発行、図書館の蔵書や貸出、教員間や生徒への連絡、教員の出退勤の記録など、FileMaker は校務全般に使われている。同校で使用している FileMaker のカスタム App はすべて内製で、教員が開発や運用を手がけているのが大きな特徴だ。

進路情報管理をきっかけに利用範囲が広がった

朋優学院高等学校の校務での FileMaker の利用は、2005 年ごろにさかのぼる。当時は進路指導部の教諭で現在は副校長の小野間大氏が一人で始めた進路情報管理が出発点だった。それまでは、教員それぞれが情報を持っていて共有されない、データがばらばらに存在し行方不明になってしまうことさえある、入力が二度手間になる、過去数年分のデータを参照したくてもできないといった状況で、これを改善するために始めたことだったという。

その後、小野間副校長の試みの効果が認められ、提案が受け入れられて、学籍、出欠、成績と、FileMaker の利用範囲が広がっていった。その結果、約 60 人の教員全員が一人 1 台のコンピュータで FileMaker を利用するまでにシステムが成長し、定着した。

朋優学院高等学校 小野間大副校長

システム管理担当者を増やしてスピーディーな対応を実現

自分でも FileMaker で作ってみたいと名乗りを上げる教員もいて、現在では10 人の教員がカスタム App の開発やメンテナンスを担当している。

FileMaker にこれまで触れたことのない教員が担当になると、まず Claris が公開している公式テキスト『FileMaker Master Book』から学び始める。そして、システム管理担当の教員が集まって実施する勉強会で学んだり、実際にレイアウトを作って先輩の教員に見てもらうなどして、スキルを伸ばす。

こうした取り組みについて小野間副校長は「FileMaker ならレイアウト作成や簡単なスクリプトあたりまではすぐ習得できるので、システム管理の担当教員を増やせます。カスタム App の構造そのものの設計やWebとの連携など高度な開発をできる人数は少なくても、レイアウトを作れるメンバーが多ければカスタム App の活用範囲を格段に広げることができます」と語る。

システム管理主任の成宮博之教諭も「内製するメリットはコストとスピードです。同僚の教員から『こういう帳票がほしい』といったリクエストを受けてカスタマイズをすることがよくあるのですが、その一つひとつは些細なことです。そうした要望にすぐ対応できて日常の校務に活かせるのがいいですね」と述べる。

朋優学院高等学校 理科科副主任・システム管理主任・入試広報部 成宮博之教諭(写真右)

改善を積み重ねて効果を得られるから使い続けている

FileMaker を長く使い続け、校務全般にまで広げてきた背景を、小野間副校長は次のように説明する。「最初に FileMaker で始めたのが良かったですね。きっちり要件定義を固めなくても作り始めることができ、使いながら出てくる課題にその都度対応しています。学校の実情に合うシステムを作り、集約したデータを思い通りに活用できることが、実際に使う教員自身が開発や運用をする意義だと思います。FileMaker の習得やシステム開発にある程度の時間がかかっても、最終的には校務が効率化されて仕事の時間は短縮できます。しかも学校は 1 年単位のサイクルで動いているので、一度作れば毎年繰り返し使えるものも多いのです。データを長年、構造化された形で蓄積しているため、在学中の成績と進路の分析などもできるようになり、興味深い知見を得ています」。

こうして、校務が楽になる、ミスがなくなる、データを有効活用できるといった効果を得て、FileMaker で扱う校務の範囲が広がり、全教員が使うようになった。成宮教諭は「利用することで良さを感じ、賛同する教員が増えると、抵抗なく使ってもらえるようになります」と言う。

教員が利用するカスタム App のメニュー画面。校務全般に利用されていることがわかる

最新のテクノロジーも取り入れて、さらに充実を目指す

長年にわたって FileMaker を使い、システムを成長させ続けている背景としてはもう一つ、外部システムとの連携や新しいテクノロジーへの対応も挙げられる。

具体的には、カスタム App のデータを用途に応じてWebに公開したり、受験生のウェブ出願では外部の決済システムと連携したりするなど、FileMakerを核としてシステムを拡張し、コミュニケーションや校務の効率化、利便性の高いサービスの提供に役立てている。また、FileMaker のアップデートで追加される新機能も積極的に取り入れている。

校務にかかる時間を減らす目的は、その分、生徒に関わる時間を長くすることだ。また、生徒への情報提供や自習用の教材などにも FileMaker が活用されている。このように、生徒に対する教育サービスの提供には FileMaker がすでに多くの場面で役立てられているが、今後は保護者とのコミュニケーションにも活用したいと小野間副校長は語る。またペーパーレス化の推進やFileMakerをクラウドで利用できる Claris FileMaker Cloud の導入も検討したいという。教員が自ら開発する朋優学院高等学校の校務システムは、今後もさらに充実していくことだろう。

図書館の蔵書管理と貸出のシステムにも FileMaker が使われている

朋優学院高等学校

朋優学院高等学校(学校法人中延学園)

所在地:東京都品川区西大井 6-1-23

業種:学校

概要

朋優学院高等学校では、受験生向けの学校説明会やウェブ出願、合否判定と通知から、学籍、成績、出欠、各種証明書の発行、進路と、入学前から卒業後までの生徒のデータをすべて FileMaker のカスタム App で管理している。生徒に関するデータだけでなく、図書館の蔵書や教員の勤怠などにも幅広く FileMaker が使われている。カスタム Appはすべて、副校長を中心とするシステム管理担当の教員が開発、運用している。

導入成果

  • 生徒に関する情報が一元管理されるため、入力の二度手間やミスがなくなり、データを有効活用できる。
  • カスタム App を使う教員自身が開発しているため、ニーズにぴったり合うものを作れる。カスタマイズも小回りが利く。
  • 教員が校務にかける時間が減り、生徒への対応に時間をかけられる。
  • FileMaker はウェブや外部システムとの連携もできるので、利便性やコミュニケーションの向上にさらに役立つ