事例

外国人材管理の複雑な書類も簡単・正確にデータ化、AI × FileMaker で変化に強い業務システムを構築

目次

  1. Claris FileMaker の飛躍的な進歩に驚き
  2. Claris FileMaker で「深夜の定例残業」がゼロに
  3. 「自社で成功したことは、必ず他社の役に立つ」
  4. FileMaker と Bubble をあえて“二刀流”で使い分け
  5. 開発環境は Mac を採用
  6. AI × FileMaker で「紙の山」を一気にデータ資産へ
  7. AI 画像読み取りで OCR の“あるある”を解消
  8. Claris が提供する教育コンテンツを利用し、開発体制を強化
  9. 「速い・多機能・AI に強い」― 開発現場が語る FileMaker のリアルな評価
  10. FileMaker × AI で変化に強いシステムへ


1. Claris FileMaker の飛躍的な進歩に驚き

株式会社 MJテクノロジーは 2014 年に設立された、建設業・IT・製造業におけるエンジニア人材派遣サービス会社である。同社から派遣するエンジニアの約 9 割はミャンマーで採用した人材で、残りの 1 割弱が日本人だ。メンバーはいずれもミャンマーの国立工科大学卒業者、あるいは卒業後に就業経験がある人材で、日本語・英語でのコミュニケーションも堪能な優秀なエンジニアたちである。派遣先の多くは大手建設会社や設備会社で、BIM ( Building Information Modeling )や CAD / CAM 業務、現場監督などを担当している。

※BIM=建物の属性情報を内蔵した 3D モデルを構築し活用する仕組み。

社内では派遣メンバーへの給与明細の送付や、在留資格認定証明書の期限管理などの業務も行うが、それらは既存のパッケージソフトでは対応しきれない細かな要件が多い。当初は手作業や表計算ソフトなどを利用して管理していたが、スタッフの人数が増え 100 名を超える頃から限界が見えはじめた。

「例えば、100 名分の給与明細を封入して送付するだけでも、膨大な手間がかかり、ミスも許されません。なんとかしなければと考えていたときに思い出したのが、Claris FileMaker でした」と、語るのは、株式会社MJテクノロジー 代表取締役会長 三浦 哲也氏だ。

三浦会長は過去、大手建設会社でエンジニアとして勤務していた際に、フィージビリティスタディ(計画事業の実現可能性や妥当性、採算性などの調査・検討)を担当し、その際データ管理のため FileMaker を利用していた。当時 Macintosh ファンでもあった三浦会長は、1986 年頃から FileMaker を使っていた初期ユーザでもある。その後しばらく FileMaker から離れていたが、MJテクノロジーの創業後に再び利用を開始。「昔のカード型データベースからは想像できないほど、飛躍的に進歩していて驚きました」と振り返る。

株式会社 MJテクノロジー 代表取締役会長 三浦 哲也氏

2. Claris FileMaker で「深夜の定例残業」がゼロに

最初に取り組んだのが、給与明細を Web 上で閲覧可能にする仕組みづくりだった。独学で開発を進めたものの、クラウドへのデータアップロードだけがどうしても解決できなかった。困った三浦会長は、Claris コミュニティで質問したところ、「わざわざサンプルを作って回答してくれた人がいて、そのサンプルを基にしたら上手くいきました」(三浦会長)。

その成功を機に、領収書データの収集・管理、資格管理、健康保険情報管理など、さまざまな業務にFileMaker を活用。給与計算の基礎データ収集の迅速化、紙の封入業務の廃止により、給料日前日に恒例となっていた「深夜残業」が完全になくなり、今ではほぼ定時退社が実現している。

3.「自社で成功したことは、必ず他社の役に立つ」

こうした取り組みを進めるなかで自社内にノウハウが蓄積され、IT 分野の事業拡大を目的に新会社、株式会社ToE(読み方:トゥーイー) を設立した。

「MJテクノロジーには今、日本全国に約 500 名のエンジニアが在籍しており、ミャンマーにも採用担当がいます。彼らの情報共有や管理の仕組みを FileMaker で整備した経験が、他社の課題解決にも役立てられると考え、独立を決めました」と ToE 代表取締役社長 三浦 日向氏(以下、日向社長)は経緯を語る。

株式会社 ToE 代表取締役社長 三浦 日向氏

4. FileMaker と Bubble をあえて“二刀流”で使い分け

日向社長自身が FileMaker を初めて本格的に使ったのは、 MJテクノロジー入社後の 2024 年だが、もともとシステム開発の知見は豊富であった。学生時代、インキュベーションファンドでのインターンを通じ、投資先企業の MVP(Minimum Viable Product =顧客に価値を提供できる最低限の機能を持つ製品やサービス)をノーコード・ローコードツールで構築した経験がある。

MJテクノロジーに入社して使いはじめた FileMaker について、日向社長は次のように評価する。「業務にフィットしたシステムを作るには最適だと感じました。他のノーコード・ローコードツールは小規模のデータを扱うものがほとんどですが、FileMaker は大量のデータを扱え、繰り返し処理も高速かつ正確に実行できます。他にない強みだと思います」

一方で、日向社長は以前からノーコードツール 「 Bubble 」 を使っており、個人向け給与明細の送付などの用途では、そちらが適するため、現在は 両者を併用している。

「情報を完全に分けたいという意図もあり、エンジニアが使うのは Bubble、社内で複合的なデータを扱う業務は FileMaker と使い分けています」(日向社長)

5. 開発環境は Mac を採用

MJテクノロジーは現在、 Windows PC 、Mac、 iPhone 、iPad を利用しており、Mac と Windows の混在環境 でも FileMaker を問題なく運用している。ToE では、全員が Mac を開発環境として採用しているが、「お客様は Windows を使われている方が多いですが、これまで OS による問題はありませんでした」(日向社長)。

派遣業務の管理を網羅するシステム

6. AI × FileMaker で「紙の山」を一気にデータ資産へ

現在、FileMaker は、給与関連以外にも契約書管理、エンジニアとのやり取りで得られた要望や個別事情などの記録、在留資格認定証明書や申請書類の管理、在留カード管理など多岐にわたり活用されている。

特に在留資格は、人によって 1 年、3 年、5 年と個々に異なり、延長申請の遅れは許されない。そこで、期限が近いスタッフを一覧表示できる画面を作成。さらに必要な情報をデータベースから抽出し、ボタン 1 つで申請書類を生成できるようにした。

7. AI 画像読み取りで OCR の“あるある”を解消

在留資格の管理における大きな工夫のひとつが AI による画像読み取りだ。在留カードの画像をもとに、画像認識 AI で情報を正しく読み取って FileMaker に取り込み、データ化している。一般的な OCR では誤認識しやすい文字も、AI を使えば高精度で読み取れる。

日向社長は、「手作業だとカード番号などを書き写すのは大変で神経を使います。名前も外国人なのでパッと見て把握しにくく、時間がかかります。画像読み取り方式を採用したことで、人が行うのはチェックだけで済むようになりました。また、AI を使うことで読み取りミスを防げます。例えば『一丁目』の『目』という字は、従来の OCR では『日』になったりしますが、AI を組み合わせることでそうした誤認識がなくなります」と語る。

次に、メールの自動読み取り機能だ。入国管理局から届く通知メールには都度、受付番号が付与され、それらを手動で転記するのは負担が大きい。しかも管理局名が略称で記載されるなど、慣れないと判別しにくい。そこでメールの文面を貼り付けるだけで必要情報を抽出し、正式名称へ変換、該当のフィールドに自動入力される仕組みを実装した。

さらに、在留カード管理では月の前半と後半に分け、更新人数がすぐにわかるようにすることで担当者が業務量の予測ができるほか、申請に必要な収入印紙金額の目処も立つようになった。

「無駄な雑務はシステムがやればいい」と日向社長。

その他にも健康保険組合から届く通知や経費領収書など、さまざまな紙の情報を AI + FileMaker で読み取り、データ化している。健康保険の書類では、被保険者整理番号が付与されているが、会社の社員番号とは異なるため FileMaker で社員番号と被保険者整理番号をひも付け、整理番号だけで本人情報を引き当てられるようにするなど、精度と効率が劇的に向上している。

8. Claris が提供する教育コンテンツを利用し、開発体制を強化

現在、MJテクノロジーでの FileMaker による開発は主に 3 名のミャンマー人エンジニアが担っている。全員が IT 系の大学卒で英語も堪能。来日前には英語で FileMaker の学習ができる Claris の「Claris Academy」で学び、「Claris FileMaker Pro Expert」「Claris Connect Expert」「Claris FileMaker Server Expert」など複数の資格を取得している。

「FileMaker での開発は、非常に楽で速いです。他のプログラム言語で開発すると、フロントエンドとバックエンドをそれぞれ作り API 連携が必要ですが、FileMaker は 1 つのアプリで UI のデザインとデータベースもできてしまいます」(MJテクノロジー シニアビルダー エイ ミャッ リン氏)

MJテクノロジーは日本語教育にも力を入れており、来日後は、週 3 回日本語の小テストを実施。その記録も FileMaker で管理し、人事考課にも活用している。テストは、カンニング防止のため解答用紙に紙を利用しているが、採点は AI 読み取りで効率化するなど、現場に即した工夫も行っている。

研修生の解答(マークシート)を自動で読み取る

9.「速い・多機能・AI に強い」― 開発現場が語る FileMaker のリアルな評価

FileMaker での開発の特長について、エンジニアからは、

「FileMaker はデータベースから必要なデータを読み取って行うフィールドの計算が速いです」(MJテクノロジー シニアビルダー ナン ティリ キン氏)、

「FileMaker は機能が多く開発しやすいうえ、特に AI の読み取り機能が正確です」(MJテクノロジー アソシエイト テー ス ルイン氏)

との声が上がる。三浦会長は、「優秀なエンジニアばかりで、要望を伝えるとパッと作ってくれます。現在もミャンマーでさらに 2 名が研修中で、今後もさらに人員を拡大していきたいと考えています」と語る。

「業務のやり方は企業ごとに異なり、それ自体が大切なノウハウです。FileMaker なら、そのノウハウをシステムにのせることができ、しかも速く、安価に作れます。長年 FileMaker を使い続けているのは、やりたいことが実現でき、ストレスもないからです。限界を感じたことはありません」と三浦会長は高く評価する。

一方の日向社長は、「FileMaker はサンプルシステムが充実しているので、最初の第一歩が踏み出しやすい点も魅力だとと思います」と語る。そのほか、カメラや GPS など、iPhone の機能を何の障壁もなく使えることも FileMaker の利点だと評価する。

長年 FileMaker を使い続けているのは、やりたいことが実現でき、ストレスもないからです。限界を感じたことはありません

株式会社MJテクノロジー 代表取締役会長 三浦 哲也氏

10. FileMaker × AI で変化に強いシステムへ

今後、MJテクノロジーでは、さらに活用範囲を拡大していく予定だ。ミャンマー・東京本社・各営業所の拠点間での情報共有をセキュアに行えるよう、セキュリティー強化も進めている。ToE では、顧客の要望に応えられる体制づくりを行っていく。「FileMakerとAIを組み合わせ、高精度かつ柔軟性の高いシステムを、必要なタイミングで安定的に提供していきたいです」(日向社長)。

2025 年に新たにリリースされた、Web フォームをノーコードで作成しデータ収集できる Claris Studio にも期待を寄せている。日向社長は、「従来、他プラットフォームで実施していたアンケートや情報配布についても、Claris Studioで、より統合的かつシームレスな運用が可能になると期待しています」と語った。

(左から)テー ス ルイン氏、エイ ミャッ リン氏、三浦 哲也氏、ナン ティリ キン氏、三浦 日向氏

【編集後記】

MJテクノロジーと ToE がシステム開発で常に意識しているのは「小さく作る」ということだ。そのためのツールとして Claris FileMaker は最適である。もともと業務システムの隙間を補完するサブシステムとして活用してきたが、制度変更があってもそれに応じた改修が簡単で、不要な機能を持たせずシンプルに使える点もFileMaker を採用する大きな理由だ。

多くの企業には独自の業務システムが存在するにもかかわらず、すべてをカバーしきれず手作業や表計算ソフトで補完しているケースは多い。特に今回のように、手書き書類をデータ化し作業の効率化を図るというニッチな場面では、AI と FileMaker を組み合わせた同社のノウハウは大きな価値を発揮すると感じた。