事例

こだわりの釣具ブランドがパートナー企業と二人三脚で成し遂げた、ローコード開発による DX

海釣り派の間で「通好み」の釣り具ブランドとして親しまれているスタジオオーシャンマーク。ヒラマサやマグロといった大物釣りに特化した頑強なリールや、素材にこだわった手に馴染むカスタムグリップなど、大手メーカーの量産品では満足できない釣り人に向けたアイテムを販売している。数多くのファンを持つ彼らが、ローコード開発でどのように日々の業務負担を軽減したのかについて、株式会社スタジオオーシャンマークのチーフエンジニア 宇野 正晃氏と、株式会社サポータスの執行役員 川畑 雄太氏にお話をうかがった。

システム開発のプロの手を借りて、本格的な業務改善

「お客さまのご愛顧のおかげで弊社の商品は多くのご注文をいただいているのですが、5 年前に私が入社した当時は Excel を使った情報管理がほとんどで、データの保存し忘れや入力ミスなどの人的トラブルが頻繁に起こっていました。業務を自動化することでトラブルを回避し、毎月発生する書類仕事の負担を減らせないかと考え、一緒に開発してくれる開発会社を探し始めました。」と語るのは、宇野氏。

同社では、宇野氏の入社前から Claris FileMaker を導入しており、前任者が独学でリールの修理依頼システムをアプリ構築していた。しかし、リールの販売数が増えるにしたがって、お客さまからの修理の依頼も増加。既存システムのままでは負担が大きくなってきたため、 FileMaker 開発のプロである認定パートナー企業の手を借りてシステムを改修したいと考えたという。数社との打ち合わせを経て、最終的に選ばれたのは Claris Platinum パートナーの株式会社サポータスだった。

「前任者の残したマニュアルを手に修理依頼システムを使っていたのですが、FileMaker での開発は経験したことがありませんでした。そのため、サポート企業は『やり取りのしやすさ』と『予算感』を重視して選んだんです。複数の会社にご相談した中でも、サポータス社はその 2 つのバランス感が最も優れていることが決め手になりました。また、プラス要素としてうれしかったのは、担当者が釣り好きだったことですね。システム開発時には釣りの専門知識が必要な場面があるので、説明しなくても話が通じるのはとても助かります」(宇野氏)

スタジオオーシャンマークはサポータスとの二人三脚によって、リールの修理依頼システムの改修を終え、出来上がった修理依頼システムがとても効率的に動作するのを見て、宇野氏は FileMaker の力を実感。追加開発として、問屋への納品書や請求書の作成補助、さらには会員情報の管理など、さまざまなシーンで FileMaker を活用するようになった。

Web 上のフォームから入力された修理依頼は FileMaker の修理受付表に自動で反映される

修理受付の履歴はわかりやすい一覧で確認できる

地道なやり取りを経て、意思疎通の円滑な間柄に

「サポータス社に入ってもらったものの、そもそも一緒にシステムを開発していく経験などなかったので、最初はコミュニケーションの取り方一つにも悩みました。それでも、担当の川畑さんにはスピーディーに対応していただき、何度も打ち合わせをさせてもらえたので、徐々に勘所が掴めるようになっていきました」と宇野氏。

納品書や請求書の管理用システムの開発では、最初は帳票を紙に印刷して赤ペンで要望を描き加えるところから打ち合わせを始めていった。その後、企画書を作ってやり取りをするようになったが、文章では伝わりきらない部分があることに気づき、コミュニケーションの手段としてイラストソフトを用いるようにした。イラストによるイメージマップ製作は、言葉ではこぼれ落ちてしまうニュアンスをうまく伝えられるとともに、宇野氏自身の考えを整理する手助けにもなったという。

左:川畑 雄太氏(株式会社サポータス執行役員)右:宇野 正晃氏(株式会社スタジオオーシャンマーク チーフエンジニア)

「スタジオオーシャンマークさまとは 5 年以上のお付き合いになります。何度も打ち合わせをさせていただく中で、システム開発に関する相互認識もかなり深まってきた感触があります。宇野さまにしっかりとした形で要望をまとめていただけるので、今ではほとんど確認程度の打ち合わせしかする必要がなく、お見積もりから開発までスムーズに進捗するようになりました。おかげで、業務改善がスピーディーに進んでいる実感があります。」と川畑氏は語る。

膨大なデータもわかりやすく一覧表示できる管理レイアウト

WebDirect により広がる可能性

「FileMaker の恩恵を一番感じたのは、問屋への納品書や請求書の発行の部分ですね。それまでは Excel ベースで業務をしていたので、月に 50 件以上の請求書を手作業で発行し、請求先ごとに振り分けていたんです。それが自動化の実現によりボタン一つで発行できるようになり、月締めで作る合計請求書にいたっては、締め日になれば自動的に出来上がるようになりました。こうしたデスクワーク関連の負担はとても軽くなったと思います。

ほかにも、顧客管理の面でも FileMaker は活躍しています。例えば、商品購入時に付与されるポイントの管理ページが FileMaker で効率化されました。この効率化によって、お客さまにプレゼントする景品のラインナップを簡単に増やせるようになったのです。

FileMaker WebDirect の導入によって、顧客向け Web サイトの管理が簡単にできるようになりました。それまでは、Web サイトの更新は外部の業者に頼んでいたので、思いついたアイデアをすぐ反映させることが難しかったんです。FileMaker によって私たちの手で簡単に更新できるようになったことで、ポイントと交換できる景品をよりニーズに合ったものに変更し、お客さまに喜んでいただけるようにもなりました。今後は集まった顧客データを見つつ、商品のレコメンドやメンテナンスの情報も発信していければと考えています」と、宇野氏は今後の WebDirect から広がる可能性に期待を語った。

自社で簡単に Web サイトの更新ができるようになり、よりニーズの高い賞品を提供できるように。

リールの修理依頼システムの改修から始まった、Claris パートナー企業との二人三脚による業務改善。5 年の歳月を経て、よどみない意思疎通によって高速化したアジャイル開発サイクルで、スタジオオーシャンマークは DX に取り組み、アフターサービスで顧客満足度を高め、モノづくり以上に大切な ”釣り人の未来” を作っている。

編集後記】

素材からこだわったアイテム開発によって、手触りや使用感において大手の追随を許さないスタジオオーシャンマークの製品。手で直接使うものだからこそ、違いがわかるファンにとって同社の製品は唯一無二の存在となっています。業務効率化によって生まれた余裕が、さらなる素晴らしい製品開発に向けられることが楽しみです。