事例

特殊車両メーカーが業務改善を実現。インハウス開発の秘訣とは。

重機運搬車、クレーン付きトラック、輸送桟橋トラック、コンテナ運搬車、鋼材運搬車などの特殊車両を製造販売している 株式会社いそのボデー 。業務改善を実現する社内システム [iShare] を内製で開発したのは、たった 1 人の社員でした。開発までの経緯と、その効果、開発時のモチベーションについて、システム開発を担当した企画開発設計部の寺崎さんと、コンサルティングを行なった株式会社ライジングサン・コンサルティングの岩佐さんにお話をうかがいました。

既存のシステムが、業務のボトルネックに 。

株式会社いそのボデー(本社:山形県)は、トラックに付属している荷台のボディの設計・製造を行なっています。引っ越し用の大型トラックや、建設現場で資材運搬の際に使用されるクレーン付きのトラックなど特殊車両のボディを手掛けることも多く、その特殊性から県外から受注も多いそうです。既製品を販売するのとは違い、トラックボディの製造は、ニーズに合わせたオーダーメイドとなります。スライド式ドア、格納式サイドステップ、安全柵の取り付けや、エンジン OFF でも送風できるクーラーなど、細かい仕様変更も含めると非常に複雑で、お客様との綿密なやり取りが必要とされます。

これまでいそのボデーでは、既製の業務パッケージシステムを使用して、見積書や仕様書などの案件管理をしていました。しかし業務の特殊性から、既製のパッケージシステムでは運用しづらく、仕事のやり方をシステムに合わせる必要があったため、トラブルの原因にもなっていたといいます。

(寺崎さん)
「これまではグループウェアを使用して、作成した見積書や仕様書などを格納し、社内共有していました。ただ、案件の期間が長くなればなるほど、格納される資料やドキュメントが増えていくので、どのデータが最新なのか、どこに最新データがあるのか混乱することが多かったんです。そのため、営業部門と設計部門の連携の中で、古い情報で設計を進行してしまったり、お客様にお渡しする仕様書の取り違いなどが発生していました。」

寺崎さんは設計の部署に所属しており、情報システム部門ではありませんが、生産管理部門から業務改善のためのシステムを要望されました。

「山形本社と東京事業所で別々に案件管理をしており、これまでは生産管理部門が週に 1 回、進捗や現状を取りまとめて全社に配信していました。特殊車両を扱うため納品ごとに仕様が異なり、取りまとめに 2 日ほど費やしていたため、一括で管理できるシステムを導入できないかと生産管理部門から相談されました。」

既存のシステムに限界を感じた寺崎さんが別のシステムを探し始め、辿り着いたのが FileMaker でした。

「 FileMaker を活用して自分たちの使いやすいように案件管理するシステムを作れないかと考えたんです。まずは自分でできるところまで内製開発でやってみようと触り始めたのが 2019 年ごろでした。」

Claris 社が実施するトレーニングを受講した効果もあり、少しずついそのボデーの業務に適したシステムを作り上げていきました。しかし、一部どうしてもデータ処理に時間がかかったり、表示がうまくいかない部分が出始めます。そこで、開発時に参考にしていた FileMaker に関するブログの運営元である株式会社ライジングサン・コンサルティングの岩佐さんに相談しました。

(岩佐さん)
「当初お話をいただいて、FileMaker で内製した初期のカスタム App を拝見した際は、驚きましたね。別に私がサポートする必要はないのでは?というくらい、相当なレベルまで作り込まれていたんです。しかし打ち合わせを進めていくと、一般的な FileMaker のアプリ開発よりも数段上のレベルを求められていることがわかりました。そういうことであれば、ぜひインハウス(内製開発)のお手伝いをさせていただきましょうとお引き受けしました。」

案件に関する情報や書類を一括して管理。

業務資料の一括管理を実現し、業績もリアルタイムで確認。年間 400 時間の削減。

岩佐さんがサポートに入り、大量データの効率的な処理方法や、見やすい表示方法などを寺崎さんにレクチャーしながら開発を進め、2020 年に FileMaker プラットフォームでの内製アプリが稼働しました。これまで散在していた見積書や仕様書を一括して格納し、最新のデータがひと目で分かるような管理方法を実現しました。

(寺崎さん)
「設計部門も最新の仕様書を間違いなく確認できますし、営業部門がお客様に提出する資料もまとまって格納してありますので、取り違えることもなくなりました。また、担当営業の方々がシステムに案件の進捗や現状、数値を入力することにより、生産管理部門の取りまとめの業務も大幅に減りました。
これまでのように本社・営業所の情報を統合して定期的に集計していたものから、毎日スクリプトで自動集計することが可能になったので、リアルタイムに売上の把握ができ、生産管理部門の方からは非常に喜ばれています。業務量も週に約 8 時間(年間 400 時間以上)は削減できたようです。一方で、営業部門では当初『入力の手間が増えた』という声もありました。しかし、集計結果や修正部分が、リアルタイムで反映されることの快適さに気づいていただけたようで、今では納得して活用いただいています。」

開発のモチベーションは、「自分のやりたいことが形になる楽しさ」です。

岩佐さんのサポートがあったとはいえ、 FileMaker を活用してのシステム開発を、長期間 1 人で進めた寺崎さん。そのモチベーションはどこにあったのでしょうか。

(寺崎さん)
「一番の原動力は自分が開発をしている際に感じる、楽しいという気持ちでした。こんな機能を追加したいと考え、実際に手を動かして作ってみる。実際に思い通りに動くと素直に嬉しいし、楽しい。どうすればいいかわからなくなった時もありましたが、その際は、ネットで調べたり、岩佐さんに問い合わせるなどして解決していきました。また、最初から完璧なものを作り上げようというよりも、うまくいかなかったら作り直そうというスタンスで開発したのも、無理なく進められたコツかもしれません。社内の要望をカタチにしたものを、まずは作り、フィードバックをいただきながら開発を進めたので、出来上がった時点で現場の理解も得られていますから、 FileMaker が強みとするアジャイル開発ができていたように思います。」

株式会社いそのボデー 企画開発設計部 寺崎翔悟さん

岩佐さんも FileMaker の特徴についてこう語ります。

「 FileMaker の特徴のひとつは、使い始める時のハードルの低さです。現在様々なプログラミング言語が流行していますが、もし寺崎さんがコードについて学び、開発したシステムを同じように作ろうとすると、おそらく 3 年以上はかかるでしょう。今回、寺崎さんは、FileMaker を使って基本的な部分は半年ぐらいで仕上げました。一方で、他のローコードやノーコードのプラットフォームだと、使いやすさはあるのですが、機能的な壁に当たってしまい、このクオリティのシステムは作るのが難しいと思います。その点、 FileMaker は入り口のハードルの低さと、実現できることの奥行きや幅広さのバランスがとても良く取れているんです。」

これからも社員とお客様に安心で便利なシステムを。

今後の展望を寺崎さんはこのように語ります。

「これまでボディの制作の途中過程で、お客様に実際に来ていただいて製品を確認していただいていたのですが、このコロナ禍で難しくなってしまいました。現在は、写真を撮り、お客さまにメールで送付して、確認していただいている状況です。今後はシステムの開発を進めて、制作過程を時系列で共有できるような機能を追加したいと思っています。そうなれば、お客様に途中経過を確認して安心していただきつつ、現状に対する質問や要望に対しても対応することができるようになります。
また、営業の方々のシステムの利用が社内にとどまっている現状についても改善したいと話します。本社の営業社員の多くが、営業先での活用まで踏み込めていません。システム的には iPad やパソコンを利用できるのですが、まだ社外での取り扱いには慎重なようです。今後は、今まで以上にシステムの改良を行ない、外出先でもより活用していただくようにしていきたいですね。そうなっていけば、さらに効率的な業務の進行につながると思います。」

納品前のトラックの写真

(編集後記)

FileMaker の活用によって業務改善を実現した、いそのボデーさん。その裏には、楽しみながらシステム開発をおこなう寺崎さんと、そのサポートをする Claris Partner : 株式会社ライジングサン・システムコンサルティングの 岩佐さんの存在がありました。岩佐さんが目指すのは、「 共に考え、共に創り、そして共に改善する 」
まさに、寺崎さんと共に解決策を考え、共にアプリを開発し、そしてそれを継続的に改善しながら、株式会社いそのボデー のビジネスに貢献するソリューションへ共に育てていくことが感じとれるインタビューでした。
これからも継続的に成長していく株式会社いそのボデーのインハウスでのアプリ開発。時間をおいてまた取材したい気持ちが湧いてきました。

この事例は、こちらの Web セミナーでもご紹介しています。
「年間400時間以上の業務削減を実現した社内開発者が語るソフトウェアの内製化を成功に導く3つの秘訣。(株式会社いそのボデー)」
録画 Web セミナーを視聴する