事例

記録だけではなく「連携」を可能にする電子カルテで、健康寿命を延ばす。

医師と理学療法士が一体となって患者の治療にあたっている Do-Clinic (札幌市)。専門家同士が連携することで、痛みの根本を治療し健康状態の維持を実現しています。その連携の鍵を握っているのは、電子カルテ。ユニークで画期的なカルテの活用法について、Do-Clinic 整形・運動器リハビリテーション院長の道家 孝幸さんにお話を伺いました。


1 人ひとりの痛みの症状と、根本から向き合い治療する。

一般的な外来では、手術が必要になる患者さんは1割程度。残りの 9 割の患者さんはレントゲンを撮っても骨に異常はなく、痛み止めを処方されるのみで診察が終わってしまうケースも多く見受けられます。薬でよくなる人もいますが、大半の人は自分ではどうしようもできない痛みや違和感を抱え続けているんです。そういう患者さんのために、手術が必要なくてもリハビリによって症状を治していけるクリニックが必要だと考え、開院したのが Do-Clinic です。

Do-Clinic 整形・運動器リハビリテーション院長の道家 孝幸さん

また、整形外科医(以下:医師)になって 15 年、肩の専門医として治療を行っていくなかで術後の経過が良い人と悪い人がいることにずっと疑問を持っていました。その問いに向き合うために理学療法士(PT)の勉強会に 10 年前から参加するようになりました。そこでわかったことがあります。例えば肩の痛みは肩甲骨の動かし方 1 つで全く変わるということ。医師はレントゲンや MRI を見て腱が切れているから手術をする、といった解剖学的なアプローチをしますが、理学療法では、肩甲骨の動きや体幹や姿勢などあらゆる運動機能面からアプローチします。運動機能の評価とリハビリによって、患者さんの症状がよくなっていくことを目の当たりにして、理学療法を取り入れた治療を意識するようになりました。

手術は必要なくても痛みを感じている場合、その痛み原因のほとんどは運動機能からくるものです。運動機能を突き詰めていくと、患部とは異なるところに、痛みの原因があることがほとんど。姿勢の悪化や筋力の低下、筋肉の硬直化など痛みを起こす原因を見極め、幅広い視点で治していくのが当クリニックの治療方針です。医師と 理学療法士 が双方の知見を尊重し連携しながら、 1 人ひとりの症状に向き合うクリニック。それが、このクリニックのコンセプトであり、めざす姿ですね。

探していたのは、カスタマイズできる電子カルテ。

クリニックを開院するにあたり、電子カルテを導入しようと医療機器の展示場に何度も足を運びました。クリニックのコンセプトや体制を実現するために必要だったのは、カスタマイズできるシステム。なかなか求めているものと出会えず、諦めざるを得ないかと思った矢先に、国際モダンホスピタルショウに出展していた ファイルメーカー社の展示ブースで出会ったのが、『ANNYYS 』という FileMaker の仕組みでつくられた電子カルテでした(以下: ANNYYS )。もともと FileMaker の存在は知っていましたが、 ANNYYS の存在はその時初めて知りました。一般的な電子カルテはカスタマイズするのにお金がかかる、バージョンアップをした時にうまく反映されない、という印象がありました。一方 ANNYYS は、カスタマイズしやすくユーザーが作り上げていくことができる電子カルテとお伺いしたんです。それが導入の決め手になりました。

Do-ClinicのANNYYS_Developer版基本画面

患者さんの情報を写真とテキストで記録されている電子カルテ

私たちが最も重視していたのが、撮影した写真や動画をカルテに反映できること、そして、医師と理学療法士が使うカルテのデータを一元管理できることでした。写真をカルテに反映できるようになったことで、診察時は患者さんの人違いも起こりませんし、 理学療法士との連携も ANNYYS でスムーズに行えるようになりました。例えば、筋肉の状態を 理学療法士 が判断し、医師がリハビリ室でリアルタイムの治療をするといったことも当クリニックならではの光景。さらにリハビリの現場では、 iPad を用いて患者さんの姿勢を撮影し、写真をそのまま ANNYYS に反映させることも可能です。

写真や動画をカルテに連動させることで、患者さんにも姿勢や動きの癖などを写真で示したり、リハビリの成果を一緒に確認しながら取り組むことができます。使いながらカスタマイズできるからこそ、患者さんと対話によってベストな治療やリハビリをめざす当クリニックの方針にぴったりと寄り添ってくれるカルテが実現できたのだと思います。

リハビリ室、診療室と同じ患者さん情報を確認できるようにシステムを連携

健康寿命を延ばすための、クリニックであり続けたい。

ANNYYS の運用を始めて 1 年程経ちましたが、まだまだ改善の余地があると感じています。例えば、今は紙で行っている問診票の記入も、ゆくゆくは iPad 上で行えるようにしていきたいです。待ち時間を利用して問診票に記入された情報をもとに看護師がヒアリングを行ったり、病態の説明動画を iPad に流して患者さんが理解しはすいように情報提供したり、クリニックの考え方を伝えたりできるような仕組みをつくっていきたい。システムの完成度を高めていくことで、患者さんとクリニック側のコミュニケーションの活性化ができるのではないかと思っています。そして、運動機能の重要性を医療従事者、患者さん、さらに市民の皆様にも啓発していきたいです。

当クリニックではリハビリや治療にきてもらうだけでなく健康寿命を延していく活動にも注力しています。具体的には、通ってくださる患者さんに骨粗鬆症の検査を定期的にお勧めしています。実際に治療をしている方は半年に一度、骨密度を測っています。治療していない方も年齢に応じて定期的な検診を お知らせするようにしています。まだシステム上実現できていませんが、治療をしていない人をピックアップして検診の案内ができるようにしていきます。

iPad で撮影した写真を使用し、姿勢の確認をする PT の山崎さん

高齢化は私たち医療従事者が向き合っていかなければならないテーマだと考えています。今後も健康寿命という切り口で、当クリニック内だけでなく内科病院や歯科医院との連携も図り、分野の垣根を超えて本当の意味で患者さん 1 人ひとりの健康をサポートできる医療を実現したいですね。

[編集後記]

1 人ひとりの症状と根本から向き合う Do-Clinic は、システムだけでなく院内のあらゆるところにこだわりがありました。例えば、腰に負担がかからないような椅子や明るい気持ちにさせてくれる色を駆使したインテリアなど。全ては、患者さんの健康寿命を延ばすために通うクリニックでありたいという思いから生まれた空間です。そして、医療業界にとっては馴染みのないことでも、いいと思ったことはどんどん挑戦していく。その姿勢からも、時代の流れに合わせて進化していくという強い意志を感じました。開院して 1 年。これからもスタッフの皆さんと一緒に、理想のクリニック実現に向けて、札幌で最先端の体験ができる医院になっていくのだろう。そんなワクワクする未来を思い描くことができる取材となりました。

こちらで Do-Clinic 診療の特色 が紹介されています。


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