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はんこ調査レポート

クラリス・ジャパン株式会社は、2020 年 6 月 24 日〜 2020 年 7 月 5 日の期間にインターネット上で、組織における押印に関する無記名式のアンケート調査を行ないました。(有効回答数 : 3163)

今回の調査では、日本企業・外資系企業・非営利団体・行政機関・医療機関・教育機関に勤務する 30 歳以上の方々から回答を収集しました。回答者の役職は、社長・役員理事 21%、課長以上の役職者 22%、係長の役職者 13%、一般社員 44% 、また男女比は 57% : 43% で構成されています。

本調査は、新型コロナウイルス感染拡大にともない、多くの企業が在宅勤務へ移行するなかで、日本独特の「はんこ文化」が壁となり出勤を余儀なくされる人々が存在する現状を踏まえ、押印のために出社せざるを得ない非合理性についてどのように感じているのか、働く人の意識、押印の頻度、押印書類、組織による違いなどについて調査したものです。

働く人々の押印への意識とその実態について具体的な回答者からのコメントを交えてご紹介します。

約7割の回答者が はんこ不要と回答

今回実施したアンケート調査では、回答者全体の 7 割が、電子化されていれば「はんこ」が不要だと回答しています。

そのなかで多くの人達が挙げているのが、いわゆる「三文判」とよばれる簡易はんこによる本人確認の証明性の問題です。

中には、「事務手続きの簡略化」という名目で、事務が職員の三文判を揃えており、代理で捺印が行われることが常態化しているという回答もあり、本人が書類を確認したという捺印の本来の意味が失われているケースもありました。

また、承認が電子化されていないため決裁に時間がかかる、タイムスタンプがないため改ざんが可能である、といった問題点も挙げられています。

グラフ 1:押印の必要性について


押印理由のトップ3は、請求書・注文書・見積書

回答者のなかで、毎月1回以上職場で押印すると回答した人が、実際にどのような書類に押印しているのかを分析しました。どの書類に実際に押印しているのか、複数選択形式で回答いただいています。

トップ 3 は、請求書、注文書、見積書。続いて、基本契約書、申込書が上位を占めました。

グラフ 2 に示すトップ 8 に続くのが稟議書、売買契約書、雇用契約書、代理店契約書、人材派遣契約書などです。

グラフ 2:押印書類

なお、はんこ継続を希望すると回答した 14% の方のみで見てみると、トップ 3 は、請求書・注文書・基本契約書となりましたが、順位の入れ替わりがあっただけでトップ 5 の書類は同じでした。


行政機関で押印する人の 75% が毎日押印

前項で、30% の方が行政手続き書類に押印をしていると回答しています。そこで、行政機関で押印する人が、どれくらいの頻度ではんこを利用しているのか分析してみました。

グラフ 3:行政機関で働く人の押印頻度

行政機関で働く人のうち、実に 76% の方が、毎日押印していると回答しています。それでは一体どのような書類に押印しているのでしょうか。当然トップは 行政手続き書類。次に議事録が続き、民間企業とは内訳が異なっています。

グラフ 4:行政機関における押印書類


押印している書類に関する質問で、「その他」という回答が最も多かったのが、医療機関です。

医療機関では、議事録、その他、行政手続き書類がトップ 3 を占めました。

「その他」の内訳として最も多かったのは、処方箋。他にも診断書、診療情報提供書、紹介状、日報、報告書など医療機関独特の紙文化が顕著に現れていました。また、医療機関に勤務する方々の回答には、大変興味深いものがありました。

  • 「サインするよりも担当者名の記載にはシャチハタのほうが早い」
  • 「紙の枚数が多いのでシャチハタのほうが楽である」
  • 「筆記具の使いまわしによる感染防止」
  • 「小児患者が興味を持つ」

筆者が医療機関を受診した際に、首から 2 つのシャチハタをぶら下げている看護師さんがいたので理由を聞いたところ、確認印と訂正印だということでした。過去には患者さんに署名と押印を求める書類が多数存在していたそうですが、この10年で患者さん押印書類はなくなっているそうです。


押印文化は企業の生産性を低下させている

今回、回答者の実に 7 割の方がコロナ禍をきっかけに押印を見直すべきだと回答し、64% の回答者が生産性をその理由にあげています

具体的には、「過去の契約書がキャビネットに紙で保存されており、見直すのに紙媒体だと手間がかかる(文字検索ができない)」、「押す場所を間違えて再度印刷しなおした」、「押印のためだけに出社しなければならない」、「法人押印のための押印申請書に押印するのは無駄でしかない」などのコメントが寄せられました。

グラフ 5:コロナ禍をきっかけに押印は見直すべきだ

グラフ 6:押印は組織の生産性を下げている


「はんこ文化」は10年以内になくなる?

押印は見直すべきという意見が大半を占めましたが、「あなたの組織で押印がなくなる日がくると思いますか?」という質問では、「なくならない」と回答した方が4割を占める結果となりました。

グラフ 7:組織で押印がなくなる日が来る思うかどうか(「既に押印はない」は法律で定められたものを除く)

「なくならない」という回答の理由の大半を占めたのは、「取引先のルールに従う必要がある」から。

お互いが取引先の都合という認識を持っているうちは、なかなか変化を起こすことは難しいのかもしれません。しかし、GMO インターネットグループのように、印鑑の完全廃止をトップダウンで指示することが、世の中が変わっていくきっかけになったのは間違いありません。

実際、外資系企業に勤務する回答者のみに絞り込んでみると 「なくならない」と回答したのは23%であり、企業文化が如実に働く人の意識に現れているといえるでしょう。

グラフ 8:押印がなくならない理由


利用されている電子契約サービス

すでに外資系企業を筆頭に、多くの企業で「脱はんこ」が進んでいます。

どのようなサービスが使われているのでしょうか? 直近1年間で、第三者が提供する電子契約サービスを利用し、相互での契約締結を実施した回答者に、利用サービスの実態を聞いてみました。

グラフ 9:利用したことのある第三者機関の電子契約サービス

一位のクラウドサイン は、日本国内で 8 万社以上に利用されている、弁護士ドットコム株式会社が提供するサービスです。「適法性」「証拠力」「税務対応」の 3 点について法律知識を整理した資料も同社サイトで公開され、電子化に規制が残る契約類型についても資料が提供されています。


電子契約サービスを導入することがゴールではない

電子契約サービスの導入により、業務スピードの向上・顧客満足度向上・倉庫管理コスト削減が期待できますが、効果はこれだけに留まりません。

米国では電子契約が主流となっていますが、その多くは単独サービスを利用するのではなく、API 連携により業務全体の効率化を実現しています。

現在、世界中で 2 万種類をこえる API の接続仕様がオープン API として公開されており、 CRM・SFA・SNS・Chat・会計ソフトなど、多くのサービスが API で連携しています。

例えば、社内システムと電子契約サービスを API 連携することにより、見積書作成→稟議承認→見積送付→受注→契約書送付→契約書締結→納品 といった、契約締結業務を含む一連のワークフローの自動化が可能になります。これにより、送信先・共有先を誤る心配もなく、社内稟議から契約締結・管理までを連動させて、業務全体の効率化を実現できます。

自社システムとの API 連携では、通常、サーバ設定・SSL 証明書・プログラム開発・バージョン管理・セキュリティ対応などでコストと時間が必要になります。プログラム言語で開発をする場合には、提供されているサービスの API 仕様を確認し、開発とテストを繰り返す必要があります。

しかし最近では、ZAPIER・PowerAutomate・MuleSoft など、ノンプログラミングでシステム間連携を実現するツール導入が一般的になっています。

Claris からは、Claris Connect が提供されており、Claris FileMaker との連携はもちろん、FileMaker なしでのワークフロー設計も実現できます。ファイアウォール内に設置され、外部からアクセスできない環境下にある社内システムであっても、 On-Premise Agent (オンプレミス環境向けの専用コネクタ)を利用することで、Clais Connect を経由して安全に外部との API 連携を行うことも可能です。

 Claris Connect は、クラウドサイン および DocuSign の電子契約サービスを含む 68種類(2020年7月末現在)の サービスに対応し、今後も接続サービスの拡大が予定されています。

Claris Connect を使って クラウドサインと Chatworkで 電子契約締結を自動化するシンプルなフローを作成してみたい方は、ステップバイステップ方式で説明するチュートリアルを参考にしてみてください。
「Claris Connect - クラウドサインで 電子契約締結を自動化する」をダウンロード

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「はんこ文化」とローコード開発

近年、日本国内の多くの企業が開発を外部に委託し、手作業だった仕事を RPA 導入により自動化しています。一方で RPA を導入しても「はんこ文化」が残っている状態では、真の DX 実現は遠い未来になってしまいます。

システム導入を外部に委託している企業の業務システムは、3 年〜 5 年間後には硬直化することが多く、ビジネス環境が変化するなかで、様々な要因により変えられないソフトウェアを、現場が不満を持ちながら使い続けている、という日本企業はとても多く存在しています。また、システムがブラックボックス化している場合には、外部との連携はリスクでしかないと考えられてしまいます。

このようなシステムは、一旦納品してしまうと、たとえ開発者側で「こうしたほうが良くなるのに…」と思っても追加で費用をもらわない限り、手が出せない事情もあるからです。受託開発会社側では、基本的に開発時間(コスト)を抑えて費用削減することで利益率高めるため、もどかしい思いをしているエンジニアも多いことでしょう。

一方で、欧米では日本企業と異なり、ローコード開発プラットフォームを活用した自社開発が一般的になっています。その最大の理由は、この VUCA の時代に、大きなブラックボックス型のシステムは自社の競争力を失わせるだけではなく、社内にイノベーションを起こす柔軟性をも失わせるためです。

ローコード開発では、ユーザの反応を確認して反映することで、ユーザ目線で開発が進行します。自社の製品やサービスの運用業務に自ら関わることで、社内目線でさまざまな改善が日々おこなうことができます。

Claris FileMaker のようなローコード開発ツールを採用することで、業務要件を素早く形にしてユーザに提供することができ、1つの開発プラットフォームで WindowsOS、MacOS、iOS、ブラウザ上で稼働する業務アプリケーションを完成することができます。また Claris プラットフォームを利用すれば、セキュリティに関する負担も低減され、最先端のセキュリティが完備されたシステムの構築が可能になります。

「はんこ文化」の見直しの際には、単に電子化することをゴールにするのではなく、ブラックボックス型のシステム開発からの脱皮を目指しましょう。ローコード開発プラットフォームを採用して既存アプリケーションと API 連携すれば、ワークフローも自動化できます。With コロナ の時代には、競争力の高い、変化に素早く対応できるシステムを導入することをおすすめします。