特集

VUCA の時代に生き残るのは変化できる企業

今の時代は「VUCA」の時代と称されます。VUCA とは「Volatility(激動)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(不透明性)」の頭文字をつなげた言葉です。この社会が大きく激変する VUCA の時代に、どのような強みを持つ人が活躍できるのか。教育の分野、とりわけ 小中高校向け校務システムのパイオニア企業で、トータル校務支援システム「スクールマスターZeus」を提供しているウェルダンシステム株式会社 代表取締役 柏野慎也さんに VUCA の時代に企業の中で活躍するために必要な能力についてお話を伺いました。

ノウハウを学ぶことで、チャンスを掴む。

私は大学卒業後、出版社の編集者として勤務を開始し、転職先の企業が倒産するという経験をしています。

経営者として IT の世界に入ったのは、新しい会社を立ち上げたいという SE の友人からの誘いがきっかけでした。2003 年のことです。編集畑でやってきましたが、新しい業種で、しかも新しい会社にスタートから経営者として関われることで、「もっと新しい世界を見るチャンスを掴むことができるかもしれない」「人生の大きな転機になるだろう」と、思い切って決断しました。

当初は複数の企業向けに販売管理や、顧客管理ソフトの受託開発を行なっていましたが、思った通りにはいきませんでした。受託開発は、新規の案件を獲得し続けなければいけませんが、一方でエンジニアのリソースの問題もあり、対応できるお客様には限界があります。顧客を新規開拓しては納品するという自転車操業の日々が続き、事業を安定させるために、事業の核になるようなパッケージ製品の必要性を痛感しました。

そんな中、ある学校で出席管理のソフトが学校関係者に喜ばれたんです。当時は、教務システムを開発している会社も少なく、学校の運営は紙と表計算ソフトがベースだったので、教育関連のノウハウがありませんでしたが、たくさんの学校の先生方のお話を聞かせていただき、そこから必死に勉強しました。一度実績ができると徐々に東京都内の学校から口コミで評判が広がっていき、営業をかけなくとも問い合わせが入るような状況になり、しばらくすると社内では、校務システムの開発「スクールマスターZeus」が事業の核になりました。

100 校以上にシステムを提供していくと、学校の複雑な業務を効率化するために、蓄積された知識やノウハウがシステム上でどのように展開していくべきかがわかるようになり、学校ごとに個別最適なシステムを提案することができるようになっていきました。 

教務システムの初期開発から今年で 18 年目、教務システムだけに特化すると、むしろ学校の先生方よりも、より学校運営に必要な業務に詳しくなっていきました。

お客様はシステム導入したくてお金を払っているのではない

当社の社員が、自社の「スクールマスターZeus」を販売する際に、忘れないよう心がけているのは、学校の先生方は、教務システムを導入することを目的にしていないということなんです。

例えば、帳票をカスタマイズするときも、決して先生方は帳票を出すことを目的に依頼しているのではないんです。なぜその帳票が必要なのかをヒアリングすることが重要なのです。機能を考えるのではなく、先生が抱えている悩みや問題に目を向けて、そのために必要な解決策を提示する姿勢を社員は大切にしています。

パッケージシステムを導入すると、パッケージの導入が目的化されて、パッケージのカスタマイズに追加費用を払って、その既製品の設計通りに人(先生)が動くことになります。「スクールマスターZeus」では、FileMaker プラットフォームを中心に設計開発することで、先生方が抱えている教育現場での日々の悩みを当社の社員が聞いて、システムに取り入れることができるようになります。

ウェルダンシステム株式会社 代表取締役 柏野慎也さん

ブルーオーシャン から レッドオーシャンへ

昨今の社会状況をみていると、いかに変化に対応できるかが、すべての業種において重要になってくると考えています。伸びる組織と落ちてしまう組織と、はっきり二極化していくのではないでしょうか。だからこそ、これからのビジネスで生き抜くためには、これまでの枠にとらわれず変化していくことが大事です。実際に、当社も事業対象をシフトしていくことで、活路が開けたと感じています。

教務システムの開発を始めた当初は、東京の公立校を中心に展開していました。当時は教務システムは競争相手のいないブルーオーシャンでした。一時期、東京都内の 40% 以上に導入されていました。ところが、十数年前に大手が参入してくるようになると状況は一変します。公立校の場合、学校ごとの校務の違いは少なく、システムを自治体が調達して、一斉に地域の学校に入れます。まさに大手 SIer の得意とする市場なんです。競合他社が増え、レッドオーシャンになると、人や資金面でも、私たちには太刀打ちできません。一時的に大手が私たちのパッケージを販売してくれた時期もありましたが、それも 2 年ほどで終わってしまいました

結局、自分たちが、自分たちの力で、直接お客さんに価値を届けられるようなシステムやサービスではないと、本当の意味で会社は安定しないと気付かされました。

そこからは、学校の特色を大切にしている私立校のシステム開発に方向転換していったんです。私立校は、一校一校が独自の方針で運営されているため、学校の数だけシステムに求める価値観も違ってきます。大手にとっては、システムのカスタマイズにかかるコストが大きな参入障壁になります。しかし逆に、ローコード開発を得意とする FileMaker であれば、その柔軟性を最大限に活かすことができます。さらに、当社の社員の中には、元教師だった社員が何名も入社しており、現場に寄り添った開発を進めてシステムを進化させています。

レッドオーシャンの中を勝ち抜くことに生き残りをかけて戦っていては組織力・資本力に負けてしまうことは明白でした。当社が枠にとらわれずに変化できたことが、今の私たちの最大の強みとなっています。

重要な要素は、いかに変化に対応できるか?

VUCA の時代では、伸びる業種もあれば落ちる業種もあり、新型コロナ感染症の影響下で、多くの企業で事業の形式は大きく変化してきています。伸びる業種でも、生き残る会社と生き残れない会社があるのは、変化ができる会社であるかどうかにかかっています。コロナ禍でもパンデミックの影響以上に業績を伸ばす企業は、これまでの枠にとらわれることなく、変化できている企業だと思います。

では変化するために必要なことは何かと問われると、それは 1 つでも自分の強みを持つことだと思います。周りの状況が変わったとしても、その強みを軸にして対処できるからです。

ただ、私の場合、若い頃から強みを見つけていたかというと、20 代では正直そこまで自分自身と向き合えていなかったですね。40 代となり、ようやく強みがわかってきたかな、と感じています。

10代、20代の方に伝えたいのは、いま強みがわからないとしても、悩む必要はないということです。それに強みというのは、誰もできないようなことができる、飛び抜けたものでなくてもいいと思っています。最終的に、自分の核となるような強みを持つことが、道を切り拓く鍵になるんだということだけ知っていてもらいたいです。

今は根っこをしっかりと張っておくための期間だと思いながら、現時点で自分ができていることの中から、強みを見つけていけば良いと思います。経験を積んでいく中で、勝負できる土俵を絞って行き、どんどん高めていく。そうすることで、1番だと胸を張れる武器に育っていきます。

ウェルダンシステムのスクールマスターZeus は、Claris Japan Excellence Award 2019 で FileMaker Commercial Solutions of the Year を受賞

私たちは現在、私立校の校務システムという狭いジャンルで勝負しています。

公立校まで広げると、大手も含め数十社、数百人のエンジニアとの競争に勝っていかなければならない。しかし私立校に絞ると、ライバルは数十人に絞られます。私立校の校務システムという特定の分野に限定してしまえば、私たちのエンジニアは日本で 1 番なんです。元々自分の中にある強みによってチャレンジする舞台を絞っていく。私自身もそうやってここまでやってきました。これから活躍する世代の皆さんにお伝えしたいのは、どんなジャンルでもいいから、ひとつの範囲の中で自分が頭 1 つ抜けてるような状態を作っていくこと。たくさんの経験を積みながら自分だけの強みを見つけて磨いていってほしいです。

[編集後記]

ご自身の経験から、これから求められるであろう「変化に対応するために必要なこと」についてお話をしてくれた柏野さん。さまざまな状況の変化を乗り越え、私立校の校務システムではトップを誇るウェルダンシステムが掲げるミッションは、「空いた時間を生徒のために」。システム導入によって生まれた時間を、生徒のことを考える時間に充てることで、日本の学校教育の質をあげていってほしい。日本で一番私立の先生方に必要とされているシステムをこれからも届け続けたい、と柏野さんは力強く語ってくれました。

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