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もどかしく過ぎた10年とシステム開発の夜明け

自社システム開発の前に立ちはだかる勉強の壁。試行錯誤を繰り返しながら導き出した答えとは? 中小企業のDXに必要なローコード開発のヒントを、株式会社イング 武田 正明さんに伺いました。

思い描いたものが形にならない。もどかしく過ぎた 10 年。

私は普段ジュエリーの企画・デザインの仕事をしています。直営で小売を営む株式会社イング (https://www.i-ing.co.jp )という会社の経営をしており、記念指輪用のセミオーダー受注システムが作れないかと考えました。

お客様の目の前でデザインを含めたオーダー内容が確認でき、仕様変更にも即座に対応できる。そんな IT システムを思い描き、まずは既存のパッケージシステムを探しました。しかし、まるで理想のシステムは見つかりませんでした。

デザインの元となる型の数、金属の種類、宝石をいれる場所、何百種類にもなる宝石自体の種類…。条件の掛け合わせが多すぎて、オリジナルのシステムを作るしか残された手段がないことがわかりました。

そこでシステム会社に開発見積を依頼したら、数千万円という価格が出てきたんです。システム開発に関しては全くの門外漢ですから、相場もわからず「こんなに高いのか!」 と衝撃をうけました。

それでも諦めきれず、いろんな企業にお話を聞いてみたり、フリーランスの方にお願いしてみたり。時間とコストをかけて、大変な思いをしながらなんとか実現させようとしましたが、わかったことは、社外に頼んでも思い描いたものには程遠いシステムしか作れないという悲しい現実でした。

結局自分で作るしかないのでは、と 一つのあるソフトウェアに望みを託して取り組んでみることにしました。それが FileMaker でした。その時、既に最初の構想から 10 年が経っていました。

自然の木と貴金属を組み合わせた記念日の指輪をセミオーダーできるショップ「NENRIN」

早速作りはじめたい!立ちはだかる勉強の壁。

FileMaker を購入して、チュートリアルを見ながら独学で作り始めました。

しかし、開発作業は難航します。私の性格的な部分が原因だったと思いますが、用意されている学習用のシステムを 1 つ 1 つなぞりながら学んでいく基礎からの学習スタイルが合わなかったんです。自分の気持ちとしては、思い描いているものをいちはやく作り始めたい。でもその作り方がわからない。歯痒い思いでいっぱいでした。

そこで、今度は作ること自体を手助けしてくれる方を探してみました。そうしたら趣味で FileMaker を利用して 20 年になるという方と出会い、その方に教えてもらいながらシステムを作り始めたのですが、なんだかしっくりこない。どうしても理解し難いし、話に聞いていた FileMaker とは何か違う。結局また開発がストップしてしまいました。

打開策を探して参加した ファイルメーカー社(現 Claris 社)主催の セミナーで、「15 分トレーニング」というものがあることを知りました。自分に合わせた形で、本来の FileMaker らしい作り方を教えてくれるかもしれない。そう思って試したのが最初です。

結局 1 年間で 200 回以上のトレーニングを受け、当初開発しようとしていたシステムの約 90 %が完成するまでに至りました。とにかく自分の作りたい物のために手を動かしたいと思われる私のような方には、15 分トレーニングをおすすめしたいです。

構想から約 11 年、自社システム開発の夜明け。


株式会社 イング CEO 武田 正明さん

最初のうちは、とにかくトレーナーからの指示通りに手を動かしていました。15 分トレーニングには、「指導者が一切マウス操作しない」というポリシーがあるため、操作は自分が繰り返し行うことになります。そのため操作方法は自然と覚えていきました。

水泳でもダンスでも、何でもそうですよね。本を読むだけ、話を聞いただけでできるようになることなんてまずありえません。とにかく身体が覚えるまで繰り返すことが大事だと感じました。

15 分という限られた時間なので、何を相談するかがとても重要です。自分の作りたいシステムを作るには何がわからないのか、あるいは何を作りたいのか。相談を 1 つに絞って、手を動かす前提で 15分トレーニングに臨みました。

FileMakerで開発した自社システム「iSiMaS」の画面

余談ですが、私のお客様には、なぜか IT 系エンジニアの方も多いんです。お店でお客様と仕様を決めていく際、必ず内容を iPad で確認していただきます。一通り入力が終わって、確認のために画面をお見せするときに、いつもこんな話を挟むようにしています。「このシステムは私が FileMaker で作ったんです、しかも 1 年で」って。そうするとみなさん本当にすごく驚かれるんです。

私は素人ですし、専門の開発言語で開発するとしたら絶対に 1 年では完成できませんでした。ローコード開発ができる FileMaker と、この 15 分トレーニングのサポートが有ったからこそ、システム開発の夜明けを迎えられたのです。

[編集後記]

セミオーダーの指輪をお客様とその場で選びながら作っていけるシステムを構想してから約 11 年。何度も挫けそうになりながらも、武田さんの「どうしても形にする!」という信念を貫いて完成した自社システム「iSiMaS」。この名前の由来は、「ING Stock & Information Management System」の頭文字をとり、「iSiMaS」 。そして、「愛します」という 二人の愛の結晶でもある指輪を販売しているという意味も含まれているそう。お客様への接客だけでなく、システムひとつをとっても想いがつまった、武田さんの仕事への温かく真っ直ぐな姿勢が伝わるインタビューとなりました。


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