事例

西日本で大人気のタピオカ入りスムージー tapiking(タピキング)が iPad アプリで 脱 FAX

熊本県で人気のタピオカスムージー店「タピキング」を運営するプライスレスは、従来は FAX と表計算ソフトが中心だった受発注業務を Claris FileMaker でデジタル化。発注から請求までの一連のプロセスを自動化し、大幅な効率化と人的ミスの削減を実現した。プライスレス 部長 緒方 安希子 氏、Claris FileMaker での開発をサポートした株式会社 U-NEXUS 専務取締役 横田 志幸 氏に話を聞いた。

タピキングは熊本で「ソウルフード」

近年のタピオカブームのはるか前の 2005 年から、熊本県を中心にタピオカ入りスムージードリンクのチェーン店「タピキング」を展開している有限会社プライスレス

タピオカドリンクといえばミルクティーやジュースが定番商品であるが、プライスレスでは一般的なタピオカドリンクとは一線を画す。

「タピオカ店と見られがちですが、当社はスムージー店として、差別化を図っています」と緒方安希子氏。

タピキングは熊本で「ソウルフード」と言われるほど人気が高まっていき、その後全国的にタピオカブームが起きたこともあり店舗は順調に増加。現在は熊本以外にも、福岡、鹿児島、大分、愛媛、京都で展開し、その数は 16 店舗にのぼる。直営店とフランチャイズ店があり、ロードサイド店舗やショッピングモール内店舗など、店舗の形態もさまざまだ。

熊本県以外にも展開しているタピキングの店舗

FAXを使い続けるデメリットとは?

店舗が順調に拡大すると、商品販売を主な業務とする店舗アルバイトの数も増えていった。その一方で、仕入れ発注といったバックオフィス業務には問題が生まれていた。たとえば店舗スタッフはほぼアルバイトということもあり、細かな発注ルールが要求される FAX で人的発注ミスが少なからず起きるようになった。

当時の様子を緒方氏は、「100 人以上ものアルバイト全員に発注ルールを教育するとなると時間がかかりすぎます。結局、アルバイトに任せた業務も、間違いがないか本部の社員たちでダブルチェックを行い、ミスがあればその都度、修正に追われていました」と当時を振り返る。

さらに、紙でのやりとりだったことも災いした。受信者がすぐ FAX に気付かずロスタイムが発生するといったトラブルも。また、当時は手書き伝票から表計算ソフトに手入力し直す業務フローも存在していたため、手書きの価格が間違っていることもあれば、表計算ソフトに転記する際の入力ミスなど、手作業ゆえのミスがあった。

既成の請求書作成ソフトも試したが、出荷チェック機能がないため、請求データを元にメーカーに店舗への直送を依頼するなど手間がかかっていた。

緒方 安希子 氏(プライスレス 部長)

当時、管理を託されていた 緒方氏は、

「受注から請求、出荷の一連の流れをデータ活用して業務を効率化したいと考えていました。このような課題を解決するため、自分たちだけで問題解決法を探すよりも課題解決のプロに相談したほうが良いと判断し、経営コンサルティング会社に相談しました。」

ここで紹介されたのが長野県にある Claris パートナー企業の U-NEXUS だった。

改善を繰り返しアプリを完成させるアジャイル開発をローコードで6ヶ月で実現

 紹介を受けて本プロジェクトを担当した 株式会社 U-NEXUS 横田氏は、「プライスレスさんは表計算ソフトの使い方に非常に長けておられ、表計算ソフトを駆使して業務を管理されていました。ただ、本当に忙しそうでした」と語る。

U-NEXUS は、Claris FileMaker を使ったソリューション開発に強みを持つ Claris 認定パートナー企業。プライスレスの課題を聞いた U-NEXUS 横田氏は、iPad を使った FileMaker アプリ導入にピッタリの案件と感じたと語る。紙でのアナログ作業に慣れた人がデジタルに移行する際は、現場での”変化への負担”が存在する。そこで、プロトタイプとして iPad 上でカスタム App を動かし、実際の業務で使いながら、関係者を巻き込みながらアプリを改善していった。

「今回は受発注から請求業務までをアナログからデジタルに移行するプロジェクトでした。FileMaker は開発効率が良く、修正が容易です。実際に今回開発してみて、FileMaker はこのようなピンポイントの課題解決に最適だと改めて実感しました。もし、他のソフトウェアを選択していたらもっと大変だったでしょう」(横田氏)

アプリ開発にあたり緒方氏も、「トライアンドエラーを繰り返しながら進めていきましたが、良き伴走者としてサポートしていただきました」と U-NEXUS とのアジャイル開発を高く評価している。

横田 志幸 氏(U-NEXUS 専務取締役)

iPad アプリで紙での作業をスムーズにデジタル移行できることも FileMaker 導入理由のひとつ

アジャイル開発で生まれた改善の芽

新たなシステムでの発注は、店舗の iPad と PC どちらからでも可能だ。カスタム App にはアジャイル開発で生まれたアイデアで、発注時の入力規則が組み込まれており、間違った発注をしようとするとエラーを表示する。これにより習熟度の低いアルバイトなどがルールを逸脱した発注ミスは無くなった。さらに、発注内容は経営本部が確認するが、データ連携されているため、紙ではなく画面上でカスタム App のボタンを押すだけで済むようになった。FileMaker で業務をデジタル化して得られた改善効果はこれだけにとどまらない。

間違った発注を行うとエラー表示が出る

そのほか、従来は本部と店舗間で行っていた請求処理についても、請求データの電子化により、毎月の紙での出力や郵送が不要となった。さらに、発注や請求の明細が店舗側で常時閲覧可能なので、伝票確認や配送ステータスなどについて、店舗から本部へ問い合わせも無くなったことで、本部のスタッフが調査して回答する手間も無くなった。過去に表計算ソフトで計算していた配送料についても、店舗毎に配送料をマスタ管理することにより自動計算され、請求に組み込まれることで作業時間の短縮が実現したという。

FAX による数珠連鎖を断ち切りたい

従来、仕入れ先であるメーカー各社への発注は問屋を介して FAX で行っていたが、店舗から問屋へ、問屋からメーカーへとリレーのような連絡で、手間がかかっていた。一方だけが、アプリ導入により業務をデジタル化しても、外部業者である問屋やメーカーが FAX で業務を行うことまでは改善の手が及ばない。そこでインターネット FAX を利用し、FileMaker 側のデータを連携することにした。これにより発注内容は、カスタム Appが自動変換し相手の FAX にアプリ側から送信する形になり、送信に関わる時間も削減。さらに、問屋と交渉し、問屋の名前で プライスレスが直接メーカーに発注できるようにした。これにより納品までのリードタイムが 1 日短縮されながらも、従来の商流が保たれており三方良しとなった。

「こうした業務のデジタル化は前例がなかったため、新しい業務フローを導入するにあたって問屋との調整は必要でした。が、これにより店舗在庫を 1 日分減らすことができ、キャッシュフローを改善できました」と緒方氏は語る。

今回のシステムの効果について緒方氏は、「旧来のような FAX での紙でのやりとりを廃止したことにより、店舗で入力したデータをそのまま本部でもシステム上で確認できるようになり、手入力での転記ミスがなくなりました。また、アプリで入力規則をあらかじめ組み込んだことにより、アルバイトでもルールに適合した発注ができるようになりました。これらの業務改革のおかげで結果的に、バックオフィスのスタッフをほぼゼロにできました。飲食業界は人手不足が深刻とされますが、弊社も例外ではありません。バックオフィス業務に人員を割く必要がなくなったことで非常に助かっています」とカスタム App 導入の効果を語る。

プライスレスは今回のデジタル化により、煩雑な手作業から解放された。新たに生み出した時間を活用し、さらなる成長を遂げることだろう。

【編集後記】

タピキングのタピオカスムージーは多くの熊本県民に愛されており、地方独特な習慣や特産品を紹介する TV 番組「秘密のケンミンショー」でも取り上げられた。もはや一企業の商品というだけでなく、“熊本名物”ともなっている。ホームページを彩るカラフルで魅力的な商品群。現在は地元の熊本以外にも京都や福岡などにも出店しているので、近くの店舗へ足を運んで味わってみたい。

本事例について、詳しくご紹介した Web セミナー「飲食店DX事例 〜熊本で愛され続ける超人気店を裏で支える カスタム App」の録画も併せてご覧ください。