特集

システムの導入を通して、現場と感謝しあえる共創関係を築く。

特定医療法人桃仁会病院で医局秘書と医療情報室を兼務されている松本清美さんにお話を伺いました。松本さんは、医局秘書として事務業務を行う傍ら、医療情報室の主任としてシステム導入の検討、FileMaker でのシステム構築・メンテナンスを担当されています。

今は医療情報委員会を立ち上げたことで現場の声を吸い上げ反映する体制ができあがっていますが、その仕組みへたどり着くまでには一筋縄ではいかない長く遠い道のりがありました。

特定医療法人 桃仁会病院 医局秘書/医療情報室主任 松本 清美さん

現場ドリブンで改善を続けた 10 年もののシステム。

2010 年のオーダリングシステム稼働と同時に、文書作成・管理システムとして FileMaker が導入されました。当時、当院に医療情報室はなく、院内で FileMaker での構築ができるのは私だけでしたが他業務で手が回らず、開発はベンダーさんにお願いしていました。しかし、いざ運用が始まると、細かい部分で実際のオペレーションと噛み合わない仕様になっている部分があることがわかりました。

稼働から 1 年ほど経った頃、看護師さんから「困ってるんだけどなんとかならない?」と相談がありました。

桃仁会は人工透析専門病院で、透析患者さんは他院へ転院されることはもちろん、手術などの目的で桃仁会病院に入院するなど、グループ施設間を移動されることが頻繁にあります。それらに応じて情報提供書の様式や内容が異なるのですが、既往歴など共通項目も多くあります。

ですが、納品いただいたシステムでは文書様式ごとにファイルが独立していたため、既往歴を流用したくてもどのファイルに入力した既往歴が最新のものかがわからなくて困っている、とのことでした。

これをきっかけに、文書作成に必要な情報を管理する FileMaker システムを構築するために、開発から日々のメンテナンスまでを担当するようになりました。

仕事のスタイルが変われば帳票様式も変えたいというのは当然のニーズです。ベンダーさんにシステム改修を依頼するとお金も時間もかかってしまいますが、FileMaker だとスタッフとやりとりしながら容易に要求を実現できることが魅力的ですね。すぐに問題解決できる点は、みなさんから感謝される部分です。

患者さん一人につき、これだけの文書が必要。FileMaker なら一元管理している情報を目的に合った様式で出力できる

現場の声を吸い上げる仕組みづくり。

導入当初は FileMaker を利用することに難色を示す方もいらっしゃいました。「オーダリングシステムに患者さんの情報が入っているのに、それとは別にデータベースができるのは問題ではないか」と指摘されたり、医師以外のスタッフの多くが FileMaker を使ったことがなかったためか、使いにくいと言われることもありました。当時はオーダリングシステム側の連携制限などの理由で情報の二重登録が発生するなど問題点はありましたが、私にとっては現場が必要としているものをいかに迅速に実現するかが命題でした。運用開始後、数年間は「とりあえず今は FileMaker を使ってください」とお願いしてまわっていましたね。

それが今では、みなさん FileMaker にも慣れて理解もしてくださるようになり、「この文書もあの文書も FileMaker でつくってほしい」「こんな風にしてほしい」という依頼が増えてきました。依頼が多くて大変な時もありますが、とても嬉しい悲鳴です。

要望の多くは全体で検討が必要なものだったので、個別に対応するのではなく全体で話し合う場をつくらなければと思い、3 年前に医療情報委員会を立ち上げました。全部署に委員がいるので、現場の声を拾って委員会で議論し、また現場に持ち帰って検討してもらう仕組みで運営し、今は大変うまく動いています。


みんなが欲しいシステムを、みんなの力で実現する。

医療現場の業務課題を解決するために、率先してプロジェクトを進める松本さん

グループ施設間を行き来する患者さんの情報は、どの施設でも必要としています。中でも他院から送られてくる診療情報提供書や検査報告書などはとても重要ですが、各施設の紙カルテを移動させることはできません。そこで、スキャンシステムを導入して書類をどこからでも閲覧できるようにしたいという要望が挙がり、現在、新たなプロジェクトとして委員会で進めています。

プロジェクト始動後数ヶ月は月2回委員会を開催し、文書の洗い出しや業務フローを可視化するために膨大な作業量になるような宿題を毎回お願いしていたので、委員のみなさんに渋い顔をされていました。

ですが、業務を改善したい気持ちは全員同じなので、忙しくてもきっちりとこなしてくださり、委員のみなさんには感謝の気持ちでいっぱいです。

日々の業務をこなしながらの委員会の運営は辛いなと思うこともありますが、医局にいると先生からスキャンシステムについて「楽しみにしているよ」と声をかけてもらえたり、早く稼働したらいいな、というスタッフの声が私のモチベーションアップに繋がっています。みんなが“大変だったけど導入してよかった”と思えるシステムにしたいので、稼働に向けて頑張ります。

【編集後記】

取材中、記事に書ききれないほどの過去の経歴をお伺いしながら、努力を続ける松本さんに不思議なパワーを感じました。医局秘書として勤務をしながら、病院内の 様々な紙を電子化し続け、Word や Excel などで作成された文書だらけだった状況から、FileMaker でのシステム導入を提案し、1人情シスをこなした時代も。その中で医療情報技師の資格を取得。さらに PACS(医用画像管理システム)更新にも関わるようになり、医用画像情報専門技師の資格も取得。

現場の「もっとこうしたい!」を学ぶために積極的に医療情報学会をはじめ、各地で開催されるさまざまな研究会・勉強会に参加して情報収集し、勉強を続けられています。「活かせるかわからないけど、いつか職場のためになるかもしれないから勉強し続けるんですよ」と、笑顔で気さくに話をしてくれた松本さん。

最後に、「職場のために…って言いましたけど、実際は自分のためになるから勉強しているんだと思います。私のモットーは、“基本、断らない!”です。明日も“ありがとう!”って言ってもらえるように、もっと前に進みたいですね。」と力強く語ってくれました。女性の私から見ても本当にカッコいい、好奇心とパワーに満ちた素敵なインタビューでした。


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