事例

大切な家族だから。人が食べられる手作り無添加ドッグフード

大切な家族だからワンちゃんにより安心安全の食材を食べさせたい。そんな愛犬家に親しまれるこだわりのペットフードを販売している ランフリー というお店が東京都世田谷区自由が丘にある。製造は 100% 自社で賄い、顧客からの要望に応じたオーダーメイド品と、オーダーメイドから生まれた既製品を取り揃えている。

市場に販売されている量産化されたペットフードでは、ペットが食べることを好まない、またはペットの病状に合わないという飼い主のニーズに対して、季節に合わせた食材で、愛犬の好み・病状に応じた食事を製造することで固定ユーザーを獲得しているランフリー。必要に応じて動物病院の医師から助言を得たり、監修を受けたりもしている。

現在、自由が丘と武蔵境に店舗を構えているが、ペットショップに見られるような洋服やグッズなどは置かず、ペットフードに特化している。

実際に店舗を訪れると、愛犬家を満足させるための様々な味の品揃えはもちろん、店員による愛犬の健康や食事に関わる相談窓口にもなっており、展示品だけでもパピー、成犬、ライト、シニア、食の細い子向け、 関節サポート、リン・マグネシウム調整食、中型・大型犬用、トッピングなど更に用途別に細分化されている。

愛犬のサイズに合わせて粒の大きさも 6 種類から選択が可能

自分たちが食べられないものは出荷しない

「お客様にとってワンちゃんは、家族の一員です。大事な家族のために、私達を信頼してご注文を頂いています。ですから、自分たちが安心して食べられるものしか扱わないのです」と 経営管理本部の曽我部 滉也氏は語る。ランフリーは、曽我部 滉也氏の父、曽我部 裕氏が過去に従事した食肉卸、食品商社、ペットフード業界の経験等を活かして、大好きな愛犬の食材を製造するために 2006 年に設立した会社。ペットフードではなく、家族の “食事” にこだわり、基本となる肉類や穀類をベースに数えきれない組み合わせが存在する。

「医食同源というのは、人間だけの言葉ではないのですよね。日々食べるものから身体が作られるのはワンちゃんも同じです。毎日ずっと同じペットフードを与えていたら、味に飽きることよりも、栄養が偏ったりアレルギーを起こす場合もあります。ペットと言いながら家族の一員ですから、自分たちの事同様にワンちゃんの健康に気を使うお客様が多いです。それぞれの細かいニーズに応えるためにも、食材や商材は変化していきます。」と同社の執行役員を務める熊木 淑江氏。

栄養成分を細かく計算しレシピ通りに製造することで高い信頼を顧客から得ている

左から 経営企画本部:曽我部氏、執行役員:熊木氏、製造管理室:吉田氏

製造現場の DX

製造現場を管理する 製造管理室のテクニカル チーフ 吉田 直正氏は、「最初はなんとか表計算ソフトで管理できていました。それが、注文が増えて、食材が増え、似たような食材も出てきたことで、表計算ソフトと紙での管理に限界を感じていました。毎日注文が入るたびに、既製品の在庫とオーダー情報を確認し、製造部門で印字した紙をもとに製造していく。1 日に 40 品目以上の食材加工を現場で管理してレシピ通りに作って、欠品しないように生産し続けるのは簡単ではありませんでした。すべてがアナログだったので、製造現場を少しでも効率化したいということが一番の希望でした。オーダーメードでは、どの肉を何グラム入れて、どうつくるか… 実は昔は手計算だったのです。」と振り返る。現在は、iPod touch を導入し、製造現場への紙の持ち込みも一部削減され、より衛生的な環境を保てるようになった。さらには iPad から翌日の製造予定が見られるようにもなり、ミスのないように事前準備ができるようになり業務効率も向上したという。

前日の製造計画に基づいて、製造商品と投入内容の確認を iPod touch からおこなう

40 品目に及ぶレシピを忠実に管理するため iPod touch で管理。"投入完了♥" ハートボタンが愛らしい

「在庫がリアルタイムで確認できるようになったので顧客対応が格段に早くなりました。他店の在庫や通販倉庫の在庫などもリアルに確認して在庫引当できますし、製造日がわかるロット番号の管理もされるようになったので、より厳密で効率的な管理ができるんです。」と販売管理室 室長の田所 理紗氏。

実は販売管理室の田所氏が FileMaker 導入の先陣を切った人でもある。多品種小ロットで、顧客管理・受注管理・出荷管理・製造管理ができる中小企業向けのパッケージはない。あったとしてもカスタマイズ費用で膨大な IT 投資になってしまう。それならば自分たちで作ろうと、2015 年に社長の曽我部氏とともに、Claris が主催する FileMaker 無料体験セミナー や 有償トレーニングに参加、自分たちで FileMaker でアプリを作ることに挑戦した。1 度のトレーニングでは十分な知識の習得に至らず、有償トレーニングを再受講した。

Claris では挑戦し続ける人を応援するべく、有償トレーニングを受講して 1 年以内は再受講が無料になる「再チャレ」制度があり、田所氏も東京での受講後、福岡で開催された「再チャレ」に曽我部氏とともに参加した。東京の会社から離れ、出張先で理想のカタチを思い描いているなかで出会ったのが FileMaker 認定トレーナーを務める パットシステムソリューションズ(以下、パットシステム)の河村氏と、後方支援をしていた中村氏であった。

いくら FileMaker で、といっても構想が大きすぎる

田所氏が希望するシステムの全体像を説明すると、パットシステム 中村氏は 「いや〜、それはいくらなんでも開発未経験者が取り組むには無理がありますよ。時間をかければできるけど未経験だと数か月で完成できるか…」という厳しい回答。ランフリーにとって、2016 年から売上が成長曲線を描いているなかで重要なのは、お客様に満足いただくためのシステムづくり。FileMaker を学習していた曽我部社長、田所氏の気持ちは固く、「FileMaker なら理想のシステムができそう。パットシステムに協力してもらおう。」と福岡の再チャレをきっかけにプロジェクトが決定した。

パットシステム 中村氏は、「田所さんがトレーニングを受講されていて、FileMaker で何ができるのかイメージができている相手なので話は早い。顧客管理・受注管理・出荷管理・製造管理それぞれの Excel をベースに、ヒアリングしながらルールづくりを始めました。ランフリー(東京)と パットシステム(神戸)と距離は離れていましたが、ほぼリモートで開発を進捗して対応しました。製造現場だけは見ないとわからないので、吉田さんを訪問し個別にヒアリングをさせていただきました。」

出荷時検品作業は Bluetooth Barcodeと iPad(FileMaker Go)を連動させて出荷検品と在庫引当する

ランフリー 基幹システム「Edit」誕生

ランフリー全社員が利用する基幹システムには「Edit」という名前が付けられている。

  • Eat 食べることを通して
  • Diet & Doctor 健康を願い、ときには医者の視点で
  • I 私 と お客様の家族も
  • Together 一緒に成長する

という意味が込められているという。

レシピ、顧客管理、対応履歴、通販システム連動、受注処理、在庫管理(iPad)、製造計画(PC)、製造(iPod touch)、製造入庫(iPad)、出荷(iPad)、店舗受注、店舗 POS レジ(iPad)、売上、請求、入金、発送まで、いま全てが Claris FileMaker プラットフォーム上で動いている。

店舗 POS も iPad(FileMaker Go)が使われている

「発信者番号通知を用いた CTI(Computer Telephony Integration)で、電話が鳴ればどのお客様かわかりますし、複数飼われている場合にはどのワンちゃんなのか? 店舗で『ワンちゃんがお腹を壊しちゃった』などのお客様との会話を Edit の備考欄に入れておくと、通販センターでも『その後のワンちゃんの調子はいかがでしょうか?』という会話もできます。お客様やワンちゃんの好みや特徴、買い物履歴など、新しい社員であっても Edit で確認できるので、古くからのお客様にもきめ細かく対応が可能です。これだけの商品数があるので、お客様からも前回どの商品を買ったのかとよく聞かれるのですが、バックヤードに戻って紙を探すこともなく、iPad で即答できるようになりました。」と自由が丘店 店長の清瀬 恭代氏が笑顔で説明してくれた。

左から 営業企画室:田所氏 自由が丘店 店長:清瀬氏

【編集後記】

全てはお客様とその家族のために……動物好きが集まる会社 ランフリー。社員は毎日ドッグフードを実際に試食しているという。自分たちが食べられないものは出荷しない。それどころか、自分が食べるものよりも良い食材を使っているかも、と笑顔あふれるインタビューだった。 日本全国に多くの顧客を持つランフリーは、取材中もお客様からの電話が鳴り、丁寧にお客様の要望に全力で応じるスタッフの皆さんの共通の話題は「よかったね」だった。

「まだ在庫が合ってよかったね」

「製造が気を利かせてくれてよかったね」

「お客様が満足してくれてよかったね」

そうだ!この会社に笑顔が溢れているのは、場所が離れていても一つのチームとしてメンバーを支える土壌があるからなんだ。それを支えているのが、FileMaker のテクノロジーだということがとても嬉しく思う。

しかし、テクノロジーは決して魔法ではなく、IT ツールの導入単体では変革は実現しない。DX は、テクノロジー、組織、そしてビジネスプラクティスが一体となって初めて実現できると思う。ランフリーは DX を実現する企業文化が備わっている。そしてテクノロジーはこれからも発展を続け、Edit も更に進化を遂げることになるだろう。

ランフリーの次の進化に期待で胸が膨らむ。