事例

中小不動産会社が抱える課題に"見える化"で挑む

イギリスのサウスケンジントン タウンハウスをイメージした分譲物件

横浜市内で長年不動産業を営む株式会社マウンテンでは、代表自らが積極的に IT 技術を活用している。今回は不動産業界の抱える課題解決に向け、 FileMaker Cloud と Claris Connect を使った顧客対応システムを導入。その背景や効果について、株式会社マウンテン 代表取締役の横山 智司氏と、開発に携わった株式会社ともクリエーションズ 代表取締役の渡邊 桃伯子氏にうかがった。

不動産業における「業務の属人化」という課題

株式会社マウンテンは、代表の横山氏が 1989 年に開業し、神奈川県横浜市鶴見区で 30 年以上にわたり不動産業を営んでいる。横山氏は開業前はコンピュータ会社に勤務。不動産事業を営む傍らで IT コーディネータの資格を取得し、システムの自社開発や IoT 導入など、積極的に IT 技術を活用している。

今回、横山氏が Claris FileMaker プラットフォームを導入した背景には、不動産業における業務、例えば賃貸契約や物件管理における属人化の問題があった。特定業務に精通する担当者がいると、どうしてもその業務が 1 人に集中してしまい、もしその人が退職してしまったら業務の引き継ぎに影響がでる。これは特にデジタル化の進んでいない中小零細の企業にとっては大変なことだという。事業継続性の観点からも、改善すべき課題であると横山氏は考えていた。

「もともと他社のビジネスアプリを使用していたのですが、データベースとして活用するには使う側にある程度のリテラシーが必要で、データの整合性が取れなくなってしまうケースが多くありました。その後、AWS 上で FileMaker Server を利用し、開発のしやすさやデータ整合性が取れることを確認したところで FileMaker Cloud が出たのでこちらに乗り換えました。」(横山氏)

今回 FileMaker Cloud を導入するにあたり、システムの一部を Claris Partner 株式会社ともクリエーションズに依頼したという。

「もともと自社で開発した FileMaker のシステムがあったのですが、既存システムの改修はシステム開発会社さんに嫌がられるイメージがあったんですね。でも既存のシステムも活かしたかったので、これも含めた開発をお願いできる会社を探し、Claris Partner のともクリエーションズさんに相談したところ快く引き受けてくれました。同じ横浜市内にあるのも決め手の 1 つでしたね」(横山氏)

物件メンテナンスの管理画面と Google カレンダーを連携させたことで、情報の共有がスムーズに。

ワンアクションで複数のアプリに情報を反映

FileMaker Cloud を導入した横山氏は、クラウドのメリットについて次のように語る。

「いつでもどこでも使えるのは便利ですね。事務所にいないことも多いので、何かあってもすぐに PC やスマホから確認できます。今回、併せて Claris Connect も導入しました。

当社では Google カレンダーで予定を管理しているのですが、例えば FileMaker を使ってお客様と日程調整をしているときでも、『カレンダーを開く』という手間が発生していました。もしカレンダーを開いて予定を書き込む前に電話が鳴ったり来客があったりしたら、ちょっと待っとは言えませんので、予定の記入を忘れてしまうかもしれない。そういった人為的なミスをなくすため、 FileMaker の画面 に入力さえしておけば Googleカレンダーに自動的に同期されて、業務が完結したり、他のメンバーと情報共有できたりするような仕組みが必要でした。」

Dropbox への書類保存や、Google カレンダーの更新が一つの顧客対応画面で完結する。

FileMaker Cloud と Google カレンダーの連携部分を担当した株式会社ともクリエーションズ 渡邊氏は、「カレンダーとの連携部分をスクラッチ開発(既存のツールやシステムを使わず、1 からシステムを開発する)すると Claris Connect を使った開発の 5 倍近くの工数がかかると思います。もちろんスクラッチ開発にもメリットはありますが、今回は Google カレンダーとの同期が目的でしたので、Claris Connect を使った開発の方がスムーズだと判断しました」と振り返る。

Claris Connect で 属人化から脱却

FileMaker Cloud と Claris Connect 導入によって社内の業務がスムーズになった株式会社マウンテン。特に昨今のコロナ禍によってメンバーが集まれない、会議ができないといった状況の中でも、 FileMaker Cloud を使えば簡単に情報共有ができ、その情報をもとに業務が進められるようになったことは大きな効果だった。課題であった業務の属人化についても横山氏は「今までは契約、物件、金銭の管理をそれぞれ別々のメンバーがやっていましたが、これらの業務を全て FileMaker Cloud に『顧客対応』ファイルとして集約しました。例えば不動産業の契約には新規契約、更新契約、解約といった対応がありますし、解約したら原状復帰の工事対応も発生します。それぞれの業務に対してメンバーがバラバラと対応していましたが、顧客対応という 1 つのワークフローで業務を見える化し、属人化という課題解決につながったと手応えを感じています」と語る。

さまざまな業務を『顧客対応』ファイルとして FileMaker Cloud に集約したことで業務の見える化を実現。

IoT を活用して社会問題の解決を模索

近年では入居者の孤独死といった社会問題に対して、不動産事業者として取り組みをはじめているという。低価格で広範囲に無線ネットワークを構築できる LPDA を利用し、開閉を検知するセンサーを住居に取り付け、室内での孤独死を防ぐ実証実験をおこなっており、社会問題の解決に自ら投資し挑戦している。今後、IoT 実証実験の管理や、入居者との連絡の管理にも FileMaker や Claris Connect を使ってみたいと、将来の DXへの展望を語ってくれた。

編集後記】

事業の拡大に合わせて人員を増やす中小企業が多い中、IT 投資による処理の自動化は増員をしなくとも事業拡大に応えることができる。ただし、IT 投資には失敗する可能性もある。中小企業にとっては不確定要素の多い IT 投資よりも、確実な処理件数をこなす人員増員が良いと判断する経営者が多い…しかし労働人口減少や高齢化が迫る日本社会において、従来の経営判断は結果的に属人化や高コスト体質維持につながり、結果として事業継続性リスクにさらされる。

株式会社マウンテンの横山氏が語ったのは、未来を見据えた不動産経営だった。Claris プラットフォームを選定し、業務の自動化を実現することで失敗しない IT 投資を実践している。これこそ、いままさに中小企業の経営者が取り組むべき小さなことから始める DX のはじめの一歩なのかもしれない。株式会社マウンテンの活用事例は業界が抱える課題を解決するヒントにもなる。

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  • 2022年3月18日(金) 午後12:15 - 午後1:00(45分)
  • 講師:株式会社マウンテン 横山 氏 / 株式会社ともクリエーションズ 渡邊 氏
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